IR情報やCSR報告などの経営情報を整理し発信する「統合報告」という考え方が徐々に日本企業にも広がり始めている。その背景や企業への影響、今後についてレポートする。
第 1/4 回 「統合報告」とは何か
「短期志向」の是正が狙い
統合報告とは、Integrated Reportingの訳語であり、企業の「価値創造」についてのコミュニケーションプロセスを意味します。このプロセスの結果、作成されるコミュニケーション媒体の一つが「統合報告書」です。
統合報告が国際的に大きな動きとして始まったことの最大の理由として、2008年の金融危機が挙げられます。全世界的な金融危機を招いた要因の一つに、投資家の短期思考が指摘されています。従来型の財務情報を中心とする開示が、投資家の短期志向を促進し、企業経営の短期志向化をも招いたとされています。「金融の安定化」および、「経済社会の持続可能性」のためには、投資家および企業の短期志向を是正する必要があり、「進化した企業報告」のあり方も求められるようになりました。
この進化した企業報告として、「統合報告」が国際的に議論されてきました。他の既存の開示枠組みとの調和を前提に、国際統合報告評議会(International Integrated Reporting Council=IIRC)が国際的な開示の枠組みである「国際統合報告フレームワーク」を開発し、2013年12月に公表しました。このフレームワークを活用すれば、企業は自社の価値創造を起点に、「つながり」の視点をもって開示を行い、効果的なコミュニケーションを行うことができるようになります。