株主や投資家、アナリストとのコミュニケーション、各種ツールの作成など多岐にわたる上に奥深いIRの仕事。豊富な実務経験をもとに、IRベテランの方々にそのコツを伺います。
第2回のテーマ IRはなぜ必要?
こんにちは。冒頭から私事で恐縮ですが、3月末でローソンを辞し、4月1日よりドンキホーテホールディングスのIR部長に就任いたしました。私自身、新しい職場環境のもとで仕事を始めており、本連載が初心に返ってIR業務を見つめ直す良い機会となりそうです。皆さんとともに再確認し、しっかり実践していきたいと思います。
なぜ上場?の答えは
さて、先月号ではIR部門立ち上げ時にまつわる話を書かせていただきましたが、上場企業である事業法人のIR担当の皆さんも一度くらいは、「当社はなぜ上場しているのだろう?」「なぜIRってやらなければならないんだろう?」「どうすればIRの必要性、IR活動への協力を社内の人たちに理解してもらえるんだろう?」という疑問にぶつかった経験があるのではないでしょうか。今回は、IR活動の原点ともいえるこれらのテーマで私なりの考えを書かせていただくことにします。
まず「当社はなぜ上場しているのだろう?」。かなり素朴な疑問ですが、実は明確に答えるのはなかなか難しいものです。私なりの結論は3つあります。1つ目は、IPO(株式上場時資金調達)によって、事業展開や成長に必要な資金を調達するため。2つ目は、企業の知名度を上げてお客さまからの信頼を得る、あわせて優秀な人材を獲得するため。そして3つ目は、企業をパブリックな存在にすることで経営の透明度を上げ、株主からのガバナンスによって近代的な経営、すなわちコーポレートガバナンスを強化。「社会の公器」たる企業の私物化を防ぎ、経営力を高めることで持続的な成長を図るため。私は、以上の3つに、上場の理由が集約されていると考えています。