スキンケアブランド「LUSH(ラッシュ)」の通常店舗では、来店者にヒアリングをし、求める商品を提案する「コンサルテーション」を行っている。これ自体は多くのコスメブランドが行っているが、LUSHが目指すのは、「店員と顧客」の関係を超えた、友人のような関係性づくりだ。
関係性づくりのポイント
➊ 適切なご案内と「コンサルテーション」で信頼される関係性を構築
➋ 肌タイプは3種だけじゃない 原材料が持つ効果から提案
➌ サンプルは必要な来店者にだけ 環境保全とリピーター創出の役割
売り上げ重視から、関係性重視へ 理想は「友人」
「LUSH(ラッシュ)」は、英国発の化粧品ブランドだ。ラッシュジャパンとして営業を開始したのは1999年のこと。売り上げのピークは2013年で、その後翌14年ごろに頭打ちとなってしまった。当時行った消費者調査の結果、こんなことが判明した。
「そのころの『LUSH』には、『店員さんの押しが強い』といった、ネガティブな印象を持たれていたことがわかったんです」(ラッシュジャパンのPRマネージャー、小山大作氏)
小山氏は当時、そのように思われていた理由を、こう推測する。
「当時は個人の売り上げ成績を、そのまま給与に反映していたため、スタッフの意識が、売ることにばかり向いていたのではないでしょうか」
こうした分析を経て、ラッシュジャパンが試みたのは、短期的な売上至上主義から、長期的な顧客との関係性を志向する方針への転換だった。
「商品は、ブランド全体を構成する要素のひとつでしかありません。『LUSH』が持つ多様な側面をお客さまに知っていただければ、長期的な関係を構築できるのではないかと考えました」(小山氏)
関係の構築のために、重視するのが「コンサルテーション」だ。店内に設けたカウンターで、来店者が抱える肌の悩みを聞く。その際には、顧客自身が認識する悩みだけでなく、職場環境など、ライフスタイルに関係することも聞くようにしている。
新宿駅前店の横山奈都記氏は、「そこから会話が広がり、かなりプライベートな話をしてくださるお客さまも。知り合いでないからこそ、話せることもあるのではないでしょうか。『スタッフとお客さま』でなく、友人同士のような信頼される関係性をつくことが理想です」と話す。
「入店後即、目当ての商品棚に向かう方は急いでいるため、ご案内はひかえる」「店内をひと通り巡ったあと、特定の商品棚に戻った場合はご案内する」など、店内の顧客の動きをよく観察し、ニーズを把握する。決して商品を売ることに重きを置かないよう、心がけているという。
原材料をもとに商品を提案 生活習慣の多様性ふまえ
ライフスタイルを聞くのには、顧客との関係を構築するほかに、もうひとつ、理由がある …