支払いにかかる手間も、買い物プロセスの一部だ。あまりよくないたとえだが、支払い時に手間取る店員には、あまりいい印象を持たないものではないか。スマートフォンをかざすだけですばやく支払える、種々の決済手段が登場している。便利な一方、使い方次第では煩雑なケースもある。デジタルとは言え、あつかうのは人間。顧客にとっては決済自体の体験も、店舗への印象を左右しそうだ。
二次元コード決済 中小店舗でも導入メリット
2019年、消費者の購買行動を促進するキーワードとなりそうなのが「スマホ決済」だ。
これまでもスマホで決済するというのは可能であった。おサイフケータイの延長線上として、非接触ICである「Felica」がAndroidスマホだけでなく、iPhoneにも搭載された。これにより、JR東日本「モバイルSuica」やNTTドコモ「iD」、JCBなどが手がける「QUICPay」と言った決済プラットフォームが利用できていた。
しかし、このような非接触決済プラットフォームを導入しようと思うと、店舗側での決済端末が高額で、中小の店舗が導入しにくいという弊害があった。また、クレジットカード決済をベースとしているため、決済手数料が高く、これまた現金決済を好む中小店舗が敬遠するという背景もあり、なかなか普及しなかった。
経産省が「2025年までにキャッシュレス決済を40%にまで普及させる」というキャッシュレス・ビジョンを掲げているが、従来の決済方法だけでは達成は難しいと見られているのだ。
そうした中、注目されているのが「二次元コード決済」だ。すでに、日本国内では楽天の「楽天Pay」やLINE「LINE Pay」、NTTドコモ「d払い」「Origami Pay」、ソフトバンクとヤフーによる「PayPay」といった、二次元コード決済が導入されている。また今春にはKDDIも「auPay」を開始する予定だ。
二次元コード決済の期待値が高いのは「導入に対する障壁が低い」という点に尽きる。
中小の店舗では、わざわざ専用の決済端末を導入する必要はない。スマホやタブレット端末を使い、顧客がスマホの画面に表示する二次元コードを読み取るだけで決済が完了する。
また、非接触決済やクレジットカード決済に比べて、決済手数料が低く設定されているため、導入しやすいというメリットもある。二次元コード決済事業者のなかには、決済手数料を無料にしているところもあるくらいだ。
店舗側への売上金の入金も随時行い、これも手数料を無料にしていたりするところもある。
中小の店舗とすれば、それこそ個人で経営しているところも多く、日銭で商材の調達や給料の支払いを行なっているケースはめずらしくない。そうしたところからすれば、売り上げの入金が数日遅れるだけでも経営にダメージを与えることになる。
二次元コード決済事業者としても、こうした中小店舗に導入してもらうため、いかに手数料を安価にし、売り上げの入金サイクルを短くするかに腐心するようになったのだ。
PayPayのユーザー獲得戦略 不安感をどう払拭するか
2018年12月は、さまざまな二次元コード決済事業者が大規模なキャンペーンを展開した。新たなユーザーの取り込みに成功した一方で、二次元コード決済の課題も見えてきた。
たとえば、ソフトバンクとヤフーの「PayPay(ペイペイ)」は「100億あげちゃうキャンペーン」を展開。決済額の20%が還元されるだけでなく、当たれば決済額の全額が還元されるという太っ腹な内容の企画だった(20%還元は、1人あたり25万円の購入で5万円還元が上限) …