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売り上げ・ブランドを高める「接客」

国籍で顧客を区別しない 「接客」を武器にするツール整備

鈴木一輝氏(ゾフ)

C←「空いている方向を指差して?」って英語で何て言う?答えは、「Point your finger in the direction of the opening.」だそうだ。母国語であればすんなり思いつく接客上の質問も、第二言語、第三言語となると、とたんにむずかしくなるものだ。一般会話とは別のスキルが必要だ。国外客が増え、日本国内の店舗を訪れることも多くなりつつあるいま、店舗はどのように対応すべきか。

ゾフ ゾフ事業本部店舗支援部 店舗サポートチーム
鈴木一輝(すずき・かずき)氏

店長経験を経て、本社勤務へ。増加する国外客の対応のための店舗支援に力を入れる。

──国外客の売り上げなど手応えを教えてください。

「Zoff」の免税売り上げは、現在も伸び続けています。2015年比で18年は2倍以上になりました。原宿や銀座の店舗など、多いところでは売上高の約3割を占めます。免税対応しているのは全国220店舗中、70~80店舗です。

また、都心部だけではなく、地方を周遊する旅行者も増えています。それは数字を見ても、現場の声を聞いても実感します。特に九州や関西方面が、全体的に好調です。

──国外客対応について、どのような方針を設けていますか。

基本方針としては、国内客・国外客を問わず、同じ品質のサービスを提供することです。もともと「接客」は、訪日客対応がとりざたされる前から、「Zoffの武器」という位置づけでした。当社にはサービス品質は必ず強みになるという考え方があります。

かねてより、「モノからコトへ」と叫ばれていますが、それは国籍を問わないものです。店頭での買い物体験、それをもたらすサービスの重要性は高まっていると感じます。特に地方では、いままで以上に訪日外国人客対応が必要になることでしょう。

──国外客に向けた「接客」の重要性に気づかれたのはいつごろですか。

2016年ごろ、原宿店の店長を務めていたときです。当時から、多言語を扱えるスタッフが数人、在籍しており、彼ら・彼女らの接客によって、リピーターが生まれたり、ソーシャルメディアで話題が広まったりするようすを目の当たりにしていました。

訪日客が増えることはわかっていたし、売り上げの最大化に直結するもの。当時から、「言語さえクリアできれば、私たちがもともと磨いてきた接客スキルは通用する」と考えていました。

現在は、特に2020年までが最初の正念場だと考え、訪日客需要に力を注ぐべく、本社に勤務しています。店舗運営部と共に取り組んでいる最中です。

──国外客への「接客」における課題は何でしょうか。

個々人のスキルと支援の面では、やはり言語です。状況要因といいますか、構造上の課題としては、在庫のない特注のレンズを用いる場合は日にちを要す点。また、アフターフォローや保守をどうするか、という課題もあります。こちらは1年以上かけて解決を図ってきましたが、まだ改善の余地は残されていると思います。

──「言語」の問題は、どのように解決を図っていますか。

全店舗に、タブレット端末向けの通訳アプリ(みえる通訳)を導入しました。全店舗合計で1カ月に1000回以上使っています。ベンダー企業によると、他社よりも多い利用回数だそうです。

導入当初は、「接客」の始めの段階から、通訳アプリのオペレーターにつないでいたのですが、視力測定などの専門用語、あるいは商品特有の説明は難しいことがわかりました。

そこで、タブレット端末の画面上でテキストを見せたり、音声を再生したりできる会話シートアプリ(さわって通訳)の機能のほうをブラッシュアップすることにしたんです。

──アプリだけですべての対話を網羅することは可能なのでしょうか。

結論としては不可能でしょうし、その必要もないと思われます。

接客に携わったことのある方でしたら、共感いただけるジレンマではないかと思うのですが、店頭の効率性と、顧客満足度の両方を高めるのは相当に難しいものです。

私も店長時代に痛感しましたが、ほとんどの店頭スタッフにとっては、お客さま全員に100%の「接客」がしたいものなのです。「国外・国内を分けずに同じだけのサービスを提供する」という方針の背景には、こんな考えもあります。

なにより、自分だからできる「接客」をして購入いただけるのは、実のところうれしいですし、「ああ、努力しただけの価値があった」と思うものです。

しかし、それだと物理的に応対できるお客さまの人数をしぼらなければなりません。いっときは、「全員に60%の接客を施すほうが、全体としてはいいのではないか」という考えがよぎったこともあります。

実際はそうではなく、アプリなどのツールで自動化すべきところ、店員ごとのスキルが発揮される、いわば「自由演技」で行うところを、適切に区別することが大切なのです …

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