実際に商品を動かす施策として注目されるインフルエンサー。リーチするターゲット層もさらに拡大する中で、どうマーケティングに活用するべきなのか。8月9日のセミナーでは、有識者が実例や経験をもとに考察した。

YouTuberをはじめとしたインフルエンサーのマネジメント、プロモーション企画を手がけるUUUMの市川義典氏
その手法が効果を生み出す理由を考えるべき
「最近のマーケティング施策は手法ばかりが先行し、『なぜ、そうするのか』といった根本的な理由がないがしろにされている」─第1部でこう警鐘を鳴らしたのは、ドミノ・ピザジャパンでチーフマーケティングオフィサーを務める富永朋信氏だ。
たとえば動画広告なら、「YouTubeなら6秒以内が効果的」「最初の2秒にブランドロゴなどを提示させ、動画とブランドの関係を築く」、あるいはソーシャルメディアなら、「インスタ映え」(投稿者を引き立てる、見た目の良い写真)を狙うなど、数々のノウハウがある。
こうした傾向に、富永氏は「いまは効果があるかもしれない。しかし、みなが同じルールで動画広告を制作するようになれば、いずれ形骸化し、効果はなくなります」と釘を刺す。
「ノウハウの共有はいいが、効果が見られる理由を考えずに、まねる傾向にある。メディアやコンテンツの数は増える一方だが、消費者が関心を向ける先には限度がある。どうすれば彼ら・彼女らの興味関心を獲得できるのかを考えていかなければ、自社やブランドから独自性を失わせ、ありふれたものにしてしまうだけです」
疑似体験が商品の理解 購買につながる
次に登壇したのは、YouTuberのマネジメントや動画プロモーションの企画などを行うUUUMの市川義典氏。インフルエンサーマーケティングの実例を紹介しながら、その成果やインフルエンサーの影響力について話した。
まず挙げられたのは、化粧品のプロモーション動画だ。内容は、あるYouTuberが動画の中で実際に商品を手に取りながら、その役立て方や、使い心地を紹介するというもの。この動画を視聴したあと、視聴者の6.3%が購入に至った。続いて同じ化粧品のプロモーション動画として、2人のYouTuberがその化粧品の筆を生産する工房を訪ね、筆づくりを体験する内容のものを紹介。こちらは視聴後、商品を利用した視聴者の割合が13.1%となった。
なぜこんなに効果があるのか。市川氏は「これこそがインフルエンサーの持つ、影響力の現れ」とし、「最近は特に体験がキーワードになっています。影響力を持つ人が体験したことを、自分なりの言葉で紹介する。そうすることで視聴者はあたかも自分が疑似体験したかのように感じ、より深い理解、購買につながるのです」と解説した。
また市川氏は、YouTuberのジャンルごと、人物ごとに、ファン層がどの程度重複しているかについての調査結果を紹介。34人のYouTuberを、バラエティに富む内容を多く投稿する人たちと、ゲームに特化した人たちに分け、各人のファンの重複率を調べたところ、前者が30%、後者が26%だったという。「のべ4000万人のファンのうち重複がこの程度だと考えれば、少なく見積もっても2000万リーチはできる。複数のYouTuberを起用することで、認知はさらに伸ばせる」
インフルエンサーの持つ「色」を理解する
最後は、前出の富永氏、市川氏に加え、タカラトミーでマーケティングを担当する竹川洋志氏が登壇。インフルエンサーを起用したコンテンツを制作する際の注意点などについて鼎談を行った。
企業とインフルエンサー双方の調整を行う市川氏は、「企業がインフルエンサーを起用する際、彼や彼女自身、チャンネルの特性を理解してもらった上で、企画のすり合わせができれば効果が上がる」とアドバイス。
富永氏も「企業の言いたいことを押し付けるのではなく、インフルエンサーに自分の言葉で語ってもらうことが大切」と述べ、それを受けた竹川氏は「宣伝したい気持ちをとどめ、いかにユーザーにコンテンツとして見てもらえるかを考えている」と自身の経験を振り返った。
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