レンタル・シェア文化を浸透させるためのブランディング (後編)
必要なときに必要なだけ利用できる経済性や合理性が支持され、広がりを見せているレンタル・シェアリングサービス。車からファッション、スペース、スキルまでさまざまなカテゴリーでサービスが生まれている。ただ、なんとなく存在は知っているものの、一歩を踏み出すには至っていない生活者が多いのも事実。成長過程のサービスの最新プロモーションを取材した。
業界別販売促進
犬や猫の写真集が売れたり、テレビCMに犬や猫が起用されたりと、日本人のペット熱は留まるところを知らない。ただ、近年ペットの飼育頭数は減少傾向にある。ペットの飼育頭数が頭打ちである以上、市場を伸ばしていくには、飼い主が1頭あたりにかける金額をいかに増やしていくかが鍵となる。「うちのかわいい○○ちゃんのためなら……」と飼い主が思わず財布の紐を緩めてしまうような商品やサービス、プロモーションとは、どんなものだろうか。
愛犬の安全を配慮した車選びを提案
●トヨタマーケティングジャパン/「TOYOTA DOG サークル」のウェブサイトでは、犬目線での車選びや、愛犬との外出シーンに合わせた新型シエンタの使い方などを紹介している。
トヨタマーケティングジャパンは、ドッグオーナーをターゲットに、「犬」を切り口としたマーケティング施策「TOYOTA DOG サークル」を2012年から展開している。犬と一緒のドライブに適した車の条件として、広々とした荷室、犬が乗り降りしやすいスライドドアや低床などを挙げて犬目線での車選びを提案するほか、専用ウェブサイトでは犬との外出時における注意点や犬を連れて行ける場所など、愛犬との快適なカーライフに役立つ情報を発信している。
昨年7月に発売された新型シエンタは、犬にも人にもやさしい車として打ち出した。ウェブサイトでは、CMキャラクターの一人である滝川クリステルさんが愛犬との日常を語ったインタビュー動画『愛犬とともに生きる。』や、愛犬と飼い主の絆を描いたオリジナル動画『Smile Again』を公開。また、愛犬との外出シーンに合わせたシエンタの活用法を紹介するコンテンツも展開した。
いまやペットの数は15歳未満の子どもの数より多い。同社の調査では、犬の移動の9割以上にマイカーが使われていて、車との親和性も高い。一方で軽自動車を除く登録車の市場は1990年から頭打ちの状態が続く。市場活性化の切り札として着目したのが、犬だった。「調べてみると、犬を家族のように可愛がりながらも、乗車時の犬の安全性には無関心な飼い主が多いことが分かりました。『犬の安全も考えたカーライフ』をアピールし、新たな需要を創出することが狙いです」とトヨタマーケティングジャパン プロモーション室の浅井ちほ氏は話す。
「犬の熱中症」や「犬の乗り物酔い」をはじめ、乗車時の犬の安全に関する啓発活動には特に力を入れてきた。ウェブサイトで情報発信するほか、過去には熱中症対策商品がペットショップに並ぶタイミングに合わせてポスターを掲出したり、犬用酔い止め薬を製造販売する企業とタイアップした販促ツールを動物病院に設置したりした。こうした活動の結果、当初は認知の低かった「犬の熱中症」がTOYOTA DOGサークルのウェブサイトへのアクセスワード第2位になるなど、「活動には一定の成果があったと評価しています」と浅井氏。
日常生活ではもとより、安全で快適なドライブには欠かせない「犬のしつけ」についても、犬と一緒にダンスをしながらしつけも学べる獣医師監修の動画「Dog Dance」を公開している。このダンスはペット関連のイベントでも披露され、意識の高いドッグオーナーからは注目が高いという。
犬と一緒に行ける販売店
●トヨタマーケティングジャパン/犬と一緒に楽しめるイベント実施など、犬を連れて入りやすい店づくりを進めている。犬にフォーカスした来店キャンペーンは集客効果が高いという実績も出ている。
ペット関連イベントへの出展では、トヨタ純正用品やドッググッズを装着したドッグカーを展示。
TOYOTA DOGサークルの柱の一つが、「犬と一緒に行ける販売店」の整備である。犬と一緒にくつろげる店づくりや、ドッグオーナー向け来店イベントなどに取り組んできた。
当初はショールームに犬を入れることに対する販売店の反発が大きかったという。そこで、犬を切り口としたマーケティングの重要性を丁寧に説明して販売店の理解を得るとともに …