レンタル・シェア文化を浸透させるためのブランディング (後編)
必要なときに必要なだけ利用できる経済性や合理性が支持され、広がりを見せているレンタル・シェアリングサービス。車からファッション、スペース、スキルまでさまざまなカテゴリーでサービスが生まれている。ただ、なんとなく存在は知っているものの、一歩を踏み出すには至っていない生活者が多いのも事実。成長過程のサービスの最新プロモーションを取材した。
業界別販売促進
子ども向け教育サービスの生徒・会員獲得プロモーションが1年のうちで最も盛り上がるのが、新年度のスタートを目前に控えた今の時期である。動画やオリジナルキャラクターを活用した集客法、タブレットを活用した子どものやる気を高める学習スタイルなど、最新のプロモーション事例を紹介する。
教育の現場でのIT活用が進み、ITの特性を生かした新しい学習サービスや、既存のサービスにIT活用のメリットを補完した新たな仕組みの構築、さらにはプロモーションにおいても動画やSNSを活用した動きが顕著になっている。
子ども向けの教育サービスは、少子化の進行によって対象人口が減少し続けており、競争が激しい業界である。そのような中で、新しい技術や手法を取り入れながら会員・生徒の増加を目指す通信教育、塾、プログラミング教室の取り組み事例を紹介する。
ジャストシステムは、12年12月からタブレット通信講座「スマイルゼミ」を展開している。紙の教材を一切使わず、専用タブレットだけで学習が完結する仕組みで、小学生から中学生までのコースがある。ソフトウエア開発会社である同社が通信教育に参入した理由について、「元々、小中学校で使うソフトウエアを開発していましたが、学校の先生方から家庭学習を習慣化できるようなソフト開発の要望があったからです」とジャストシステム ILS 事業部マーケティング部マネージャの寺尾房代氏は話す。
家庭学習の習慣化のために生まれたサービスだけに、子どもの自主的な学習を促す仕組みが最大の特長だ。子どもが夢中になって「学ぶ」、親が声かけして「見守る」、学習の後はご褒美として「楽しむ」――この3つのサイクルをタブレット上でまわすことで、自然に学習習慣が身につくよう設計されている。
タブレットの電源を入れると、まずその日にやるべきことを示す「きょうのミッション」が表示される。これは、本人の学習の進み具合や理解度に応じて毎日自動生成される。ミッションが画面一杯に表示されることで、子どもが何から手をつけようか迷ったり、苦手な教科が積み上がっていったりするのを防ぐことができるという。そして何より、「子どもはゲーム感覚で取り組める『ミッション』が好きなので、やる気アップにつながります」と寺尾氏。「きょうのミッション」はサービス開始後に追加された機能だが、追加前に比べて子どもの学習量が3割、学習時間が2割増えたという調査結果があるという。
学習が終わると親にメールが届き、親はスマイルゼミのSNS機能を使って子どもをほめたり励ましたりできる。親の声かけも子どもの学習意欲を高めるのに非常に効果的だという。同社の調査では、スマイルゼミのSNS機能を使って週に1回以上励まされている子どもは、そうでない子どもに比べて週5日以上学習に取り組む率が約6.5倍というデータもある。また、副次的な効果として、「普段は忙しいお父さんとお子さんのコミュニケーションが取れるようになったという声も届いています」と寺尾氏は話す。
学習したぶんだけポイントを集め、アプリで遊んだり、自分だけの「マイキャラ」を作ったりして楽しむ機能も充実している。マイキャラは、学習進捗のよい成績優秀者がタブレット上で表彰されるときに使うことができる。勉強をがんばった証としてポイントを集める仕組みも、子どものやる気を持続させるのに効果が高いという。
ジャストシステムでは、スマイルゼミのサービス開始後もA/Bテストでの効果検証を繰り返し、子どもが自ら学習に向かう仕組みの改善に努めている。
タブレットによる通信教育サービスは、スマイルゼミがパイオニア的存在だ。新しい学習スタイルを世の中に提案するにあたっては、教材の紹介に加えて、「学ぶ」「見守る」「楽しむ」の3つのサイクルで子どものやる気を高める仕組みを、「夢中になる! だから、続く。」というキャッチフレーズとともに訴求した。テレビCMや折り込みチラシ、ウェブサイトを中心にプロモーションを行ったところ、「当初から想定を上回る入会者数があった」(寺尾氏)という。
新年度に向けたプロモーションは、「全力キッズ応援」という新たなメッセージで展開している。勉強と、スポーツや芸術文化などの課外活動との両立に励む小中学生を「全力キッズ」と呼び、スマイルゼミを卒業まで無償貸与して目標達成を支援する「全力キッズ応援制度」を昨年11月に新設した。1月からは、スキマスイッチを起用し全力キッズをテーマにしたテレビCMを放映している。「タブレット学習は効率がいいので、勉強と部活を両立しながら成績を上げているお子さんがいることが分かってきました。スマイルゼミなら勉強も部活もがんばれるというメッセージを伝えていきたい」と寺尾氏は語る。
スキマスイッチを起用したことで、これまでスマイルゼミを知らなかった層にも知られるようになり、テレビCM放映後はウェブサイトへのアクセスが伸びた。資料請求した人には ...