O2O、オムニチャネルといったデジタルの活用に注目が集まるが、その後の店内施策の不備により、チャンスを逃していることも多い。ここでは、「顧客」の行動をしっかりと観察し、そこを起点としてさまざまな施策を見直す「行動観察」の基本と業務に取り入れるためのポイントを解説していく。
1.「ビッグデータ」の活用
昨今、「ビッグデータ」の活用についての議論が活発である。
ビッグデータにはさまざまな定義がなされているが、一般的には、「標準的なデータベースでは蓄積・運用・分析しきれない規模のデータ」とされ、ID-POSはもとより、GPSなどによる移動情報や、ウェブのログ情報、SNSの書き込みや映像情報など、その種類は多岐にわたる。
ここでは売り場を考えるにあたっての代表的なビッグデータであるID-POSに絞って「行動観察」や、インタビューなどの定性データとの関係を考えていきたい。
ID-POSの情報は、すでに様々な形で分析され、売り場づくりに活用されている。
たとえば、ある商品やカテゴリ単位での購買情報を分析することで、今後の需要予測をしたり、ターゲットの設定をするなど、店頭での施策立案のために極めて重要な情報となっている。
2. ビッグデータと定性データ
前述したとおり、非常に有用なID-POS情報ではあるが、残念ながらお客さまの購買行動のすべてが記録されているわけではない。
ID-POSの情報は、どのような属性のお客さまが、いつ、何を買ったかという「結果」についてはすべての情報が残されるが、購買に至る「過程」、つまり行動の「文脈」についてはほとんど触れられないのだ。
買った商品は分かっても、店頭でお客さまが「どのように」購買を決めたのか。迷わずその商品を手に取ったのか、それとも他の商品とじっくり比較検討していたのかという情報は残されない。
さらに「買わなかった」行動については一切の記録が残らない。
一方で行動観察から得られる情報は、店頭でのお客さまの行動を詳細に記録する…