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企画担当者のための行動観察入門

顧客の「当たり前」の行動から気付きを得るための体系

文:越野孝文 エルネット マーケティングソリューション推進部長/大阪ガス行動観察研究所 主席研究員

O2O、オムニチャネルといったデジタルの活用に注目が集まるが、その後の店内施策の不備により、チャンスを逃していることも多い。ここでは、「顧客」の行動をしっかりと観察し、そこを起点としてさまざまな施策を見直す「行動観察」の基本と業務に取り入れるためのポイントを解説していく。

1.HMIの5側面

店頭での観察を実行する際、顧客の「当たり前」の行動から新たな気付きを得るためには、しっかりとした「視点」を設定する必要がある。視点を持つための体系にはさまざまなものがあるが、「行動観察」で取り入れている最も基本的な体系が、京都女子大学システム工学部の山岡俊樹教授が提唱されている「HMI(Human Machine Interface)の5側面」(図1)である。

図1:HMIの5側面

これは、Human Machineと表現される通り、人と機械の接点を観察する際の視点の持ち方なのだが、Machineの部分を人・モノ・場などに置き換えても十分に応用可能なため、私たちはあらゆる観察の場で、これを活用している。HMIの5側面とは、「身体的側面」「頭脳的側面」「時間的側面」「環境的側面」「運用的側面」から成る。

以下、HMIの5側面について、解説していく。

(1)身体的側面

人と機械(人・モノ・場)の身体的な適合性を見る視点。人の姿勢、相互の位置関係や、力学的な側面、さらに接触面のフィット性などを観るための視点である。観察の対象となる顧客が、どんな姿勢で、どんな力具合でどのように行動しているかを観る。銀行のATMコーナー(図1)を例に取ると、ATMを操作するユーザーの姿勢に無理が無いか、タッチパネルの接触面に問題は無いか、などについて注目する。店頭での顧客の観察を例に取ると、商品を見たり手に取ったりする時や、カートを押すときなどに、負担の掛かる姿勢や必要以上に力を要している部分はないか、といった観方になる。

(2)頭脳的側面

人と機械(人・モノ・場)の情報のやり取りの適合性を見る視点。

銀行の例では、表示される画面の情報が、ユーザーが直感的に迷い無く操作できる内容であるかどうかを、ユーザーの迷いや間違いの行動から導き出すことになる。このような機械操作の場合、直感的に正しい操作方法が分かる情報が提供されているかといった側面や、使用している用語の分かりやすさ、見やすさ、設計者の意図と使用者のイメージの合致性(メンタルモデル)などの視点が必要となる。店頭では、各種のサイン表示やアナウンスなどの情報によってどのように人が動いているかという点や、セルフレジなどの操作に迷いや間違いがないかなどを観る。

(3)時間的側面

人と機械(人・モノ・場)の時間面での適合性を見る視点。銀行の例では、ユーザーのタッチパネルからの入力に対応した画面表示のタイミングや、ユーザーが来店してから操作を終えて退店するまでの所要時間が適正かなどを観る。店頭観察の場合、レジの待ち時間は時間的側面の重要度が高い観察ポイントと言えるだろう。また、対面販売の場合にも、袋詰めや包装などの待ち時間と、その時の顧客の行動も、重要な観察ポイントとなる。

(4)環境的側面

人と機械(人・モノ・場)の環境面での適合性を見る視点。人の気持ちや行動は、知らず知らずのうちに物理的環境の影響を受けている。そこで、観察対象となる環境の、気温(空調)、気流、明るさ(照明)、振動、騒音などが適正に、快適に保たれているかを確認する。

銀行の例では、ATMコーナー内の空調や照明、さらには全体の空間など、ユーザーにとって快適な環境が提供されているか、などを観る。店頭では、売り場を歩く顧客が寒そうまたは暑そうにしていないか、照明が暗くてサインやPOPなどが見にくかったりしないか、音楽の種類やアナウンスの音量などが、顧客に悪影響を与えていないかなどの視点になる。

(5)運用的側面

人と機械(人・モノ・場)の関係の中で、提供されるサービスの運用面が適正かどうかを見る視点。銀行の例では、ATMの操作に迷ったり分からなかったりするユーザーをフォローし、スムーズな運用を助けるサポート要員がこれにあたる。組織の方針や情報の共有化、モチベーションなどが、適切な運用に深くかかわっており、システムやサービスが複雑になればなるほど、マニュアルや管理体制、人的サポートなど運用的側面の重要度が増すといえよう。店頭での観察の場合、平常時の商品管理や品出し作業の流れについての観察、顧客とのトラブルや迷子の対応など緊急時の対応方法についての従業員間での共有や役割分担が適切に行われているかなどという視点となる。

「行動観察」では、このHMIの5側面を用いることによって、幅広い視点からの観察を行い、多様な気付きを得ている。

例に挙げた「銀行のATMコーナー」という一つの限られた空間でも、この5側面すべての要素が存在することを理解いただけたと思う。

ただ、みなさんが観察をする際には、この5側面を意識しつつも、あまり神経質に「この部分は○○的側面か?」などと考える必要はないだろう。一つの場面を観るときでも、さまざまな観方があるということを知り、視点を切り替える際の助けとしてもらえれば十分だろう。

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