TikTokやYouTubeショートなど、縦型・ショート動画の勢いが増している。そこで展開される動画広告のクリエイティブは、どのような変化を遂げているのだろうか。またその中で、クリエイターには何が求められているのだろうか。ONEMEDIAの明石ガクトさん、OASIZの江藤優さんに話を聞いた。
「ハッシュタグチャレンジ」の本質
ByteDanceが展開するショート動画のプラットフォーム「TikTok」が日本でサービスを開始したのは2017年。2020年6月にはTikTok for Businessがローンチされた。YouTubeショート(最大60秒)のサービスが開始されたのは、その後2021年7月のこと。TikTok for Businessによると、2022年のTikTok広告事業の売上は前年比83%増と、急激な成長を見せている。
ONEMEDIA代表の明石ガクトさんは「TikTokがもたらした一番大きな変化は、一方通行だった広告が、本当の意味で双方向になってきていること。視聴者が参加者へと変化しています」と話す。
それが顕著な初期の事例として挙げるのは、2021年6月、コロナ下で公開された、資生堂「アネッサブライトニングUVジェル」の企画「#アネッサおうちで夏フォトチャレンジ」だ。アネッサのポスターのモデルになりきったエフェクトで撮影ができ、フィルターにより商品を塗ったように肌が明るくなるトーンアップ体験ができる、という企画。エフェクトの楽曲には、BONNIE PINKの『A Perfect Sky』を使用していた。
「ハッシュタグチャレンジの本質は、ユーザーがクリエイティブの一部になること。プロモーションで活用する際は、ブランドの資産をうまく用いており、かつユーザーの文脈を捉えた企画だと爆発力を生みます。アネッサの場合は、特に楽曲がポイント。2006年に蛯原友里さんが出演し大ヒットしたCMで使われていた曲、まさにブランドの資産を活用し、現代に、そして参加型でよみがえらせた。当時CMを見て憧れを抱いていた現在20代後半~30代前半あたりの女性に作用し、参加者増加に繋がったのだと思います」(明石さん)。
ブランド資産の捉え方が変化する?
最近では、日本マクドナルドが2023年1月から実施した若年層向けの施策「ティロリミックス」が、まさにブランドの資産を有効活用した事例だという。「マクドナルドのポテトが揚がった時の『ティロリ』音を、ブランドの資産だと捉えた、その視点がまずすごい。それが若者に人気のアーティストを起用したクオリティの高い音楽に用いられ、さらにユーザーが遊んで投稿できるTikTokゲームに落とし込まれていました」と明石さん。
ここでもうひとつ注目したいのは、TikTokやYouTubeショートなどのユーザーの視聴態度だ。企業のTikTokアカウントの運用やショート動画の企画制作を手がけるOASIZのCEO江藤優さんは、「基本的に頭を働かせず、動画が表示されて一瞬で次に行くか、見続けるかを判断しています。その一瞬で、『見たい』『これ知ってる』と思わせる要素を見せられるかが勝負になってきます」と話す。
その点で、一般消費者が既に広く認知している「ティロリ音」のような要素は有効となる。「一瞬で『わかる!』と思わせられたら強い。その観点から言えば、日常生活の中で一般消費者がブランドを想起する物事であれば、これまでブランド側がその資産だと認識していなかったものも資産になりうる時代。ブランドの価値の認識が変わってくると思います」(明石さん)。
こうした動きを逆に活用したのが、日清食品ホールディングスが23年7月に公開したカップヌードルのCM「夏は食っとけシーフード」篇だ。
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