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「広告」の枠を超える企業・自治体と番組コンテンツの融合

広告の枠を超え続ける「絶メシ」の思考

畑中翔太(dea)

群馬県高崎市のシティプロモーションとして2017年に発足した「絶メシリスト」。「絶やすには惜しすぎる個人経営の飲食店」をまとめたこのサイトはその後書籍化、ドラマ化、“食堂”化など、自治体の枠を飛び超えて多角的に展開され近年「広告とコンテンツの融合」を実践した代表格ともいえる。その仕掛け人の一人が、deaの畑中翔太さん。自身の仕事も従来の領域を超え、現在はテレビドラマの脚本やプロデュースも手がけている。一連の取り組みを通じていま考える「広告」と「コンテンツ」の周縁について話を聞いた。

立ち上げ直後から商標登録に動いた

改めて「絶メシ」の軌跡をたどると、17年にWebサイトが公開後、新たなシティプロモーションとして国内や海外で評価され、ACC賞2018のマーケティング・エフェクティブネス部門グランプリ、カンヌライオンズ2019のメディア部門ブロンズを受賞。その後18年と20年に書籍『絶やすな!絶品町グルメ 高崎「絶メシリスト」』『同 特盛版』(ともに講談社)が出版された。20年1月からはドラマ『絶メシロード』(全12話)をテレビ東京系列で放映。人気を博し、22年8月からはその「season2」(全8話)を、23年3月にはスペシャル版として「出張編」(全2話)を放映している。

並行して20年7月からは、全国の「絶メシ」グルメのレシピを伝授してもらい再現して提供する「絶メシ食堂」を東京・新橋に開店。売上の一部は、レシピを教えてくれた「絶メシ」店に還元する仕組みだ。

なぜ「絶メシ」という切り口が、“ひとつの市のプロモーション”を超えて、このようにコンテンツとして広がりを見せているのだろうか。「振り返ると、『絶メシ』は当初から高崎市だけのものとして完結させる気はなかったんです。当時公開直後から、高崎市だけでなく全国の方々が、SNSで『#絶メシ』とハッシュタグをつけて、自分の地域の絶メシを紹介してくれていました。僕らも高崎市側に確認をとった上で、すぐに商標の登録に動きました」。

絶メシを“皆のもの”と据えた上で、その後の展開の際に意識していたことを畑中さんはこう話す。「大切にしていたのは、『共創』と『再編集』です。僕ら広告側の視点だけでなく、出版社、テレビ局、飲食事業など──さまざまな領域の専門の方々とともに、絶メシをそのメディアに適切なものに再編集していきました。でもやみくもに広げればいいわけではありません。絶メシの目的は行列のできるような大人気店をつくることではなく、『守る』そして『残す』ことなので、そこからはぶれないように展開を広げています」。

たとえばドラマ化にあたっては、当時YouTubeなどでも注目が集まっていた「車中泊」の要素を絶メシにプラス。須田民生という中年の主人公が、妻と娘が家にいない週末に絶メシを求めてマイカーで各地を訪れる、というストーリー性を加え再編集した。「放映が金曜の深夜枠だったので、1週間働いた方々が見てホッとできる、まねしたくなるような内容を考えていきました。全体としても、次の回を見てもらうための何か劇的な“引き”をつくるのではなく、小さな幸せを味わい尽くす民生のいるこの世界観を早い段階でじんわりと好きになってもらうことを...

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