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「広告」の枠を超える企業・自治体と番組コンテンツの融合

ドラマだからこそ欠かせないネガティブな心情を描いた島根県のイメージ発信

島根県『しまねがドラマになるなんて!』

島根県は2021年にドラマ『しまねがドラマになるなんて!』をさんいん中央テレビで放映した。22年には『リターンズ』として同タイトルの続編も制作。新聞広告やSNSも連動し、県民が島根の暮らしに対してよりポジティブなイメージを持てるよう促した。

進学や就職で多くの若者が県外に

島根県は2020年度から、「人間らしい、温もりのある暮らしができる島根」のイメージ発信事業に取り組んでいる。その一環として、テレビドラマ『しまねがドラマになるなんて!』をさんいん中央テレビや読売広告社、山陰中央新報社とともに企画制作。2021年10月~12月にかけて第一弾(全10話)を、2022年12月26日から三夜連続で第二弾(全3話)を放送した。

島根で暮らす幼なじみの男子高校生3人組の前に、転校を繰り返し「ふるさと」を持たないひとりの女子高校生が現れる。4人が周りの人々との交流を通じて、ごく普通で当たり前だと思っていた景色や日常が、実は、人間らしい温もりのある島根ならではのものであることに気付き、自分の進む道を考え始めるというストーリーだ。

県内には、大学や専門学校などの進学先や就職先の選択肢が少なく、高校卒業後、県外に出る選択をする若者も多い現状がある。そこでメインターゲットとして、県内の中高生とその親世代に、島根の暮らしに肯定的なイメージを抱いてもらい、将来も島根で暮らす選択を促す目的がある。また、島根県公式YouTubeチャンネル「しまねっこCH」やTVerでも配信し、県外在住の島根県出身の若者にも届くようにした。

「島根県からは、『普段、広告としての県政情報が届きにくい中高生にも見てもらいやすいこと』と『ストーリー仕立てのため、島根の暮らしのよさを自然な形で実感・共感してもらえる』という2つの理由から“ドラマ”という手法を選択したいというオリエンがありました」と、ドラマ制作と広告企画に携わったethnic クリエイティブディレクター 髙田陽介さん。

ドラマ制作にあたり、島根の見慣れた風景が“ヒーロー”に見えるよう、観光名所は出し過ぎないように、テーマである“日常”の中にある風景にこだわった。登場人物の名前も、石見や隠岐などそれぞれ島根の地名をあてている。また一話ごとに、「バラパン」「木次牛乳」など、島根県の特産品や県民になじみのあるものを取り上げることで県民の興味をひく工夫をした。

「世の中にたくさんのコンテンツがある中で、ただドラマにしただけの、広告的な映像は観てもらえないと思いました。そこで島根にゆかりのあるもの、いわゆる“しまネタ”を出すことで、『島根のあれがドラマになるらしい!』と視聴者が自分ごと化して...

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