xRやメタバースなどへの注目が高まる中、広告領域でも新たなテクノロジー活用の可能性が広がっている。CGなどによるリアルタイム表現のR&Dに多数取り組んできた岡田太一さんが解説する。
「バーチャルプロダクション」とは何?
今日の意味合いでのバーチャルプロダクションはUnreal Engineの開発元であるEpic Gamesが提唱した概念です。その意義は映画やCMなどの映像制作において、ポストプロダクション工程(CG、合成)をリアルタイム化することで、プロダクション(撮影)工程とポストプロダクション工程を同時進行することにあります。
しかしバーチャルプロダクションという言葉が業界横断で使われるようになった結果、混乱が見られるようになりました。そこで業界ごとの視点と歴史的経緯から、その定義を解きほぐしてみようと思います。
まずはバーチャルプロダクションの元々の適用先である、映画やCMの視点から。映画やCMの領域では古くから現場プリビズ(Pre Visualization)というものがありました。当初の現場プリビズはコンテで想定したアングルのCGを事前につくっておき、現場で仮合成をすることでアングルが間違っていないか確認しながらグリーンバック撮影を行うものでした。その際、CGや合成は後日時間をかけてやり直す前提であるため、現場用にはアタリとしての低クオリティな仮CGで事足りていました。
そうしたプリビズのひとつの転換点が、映画『アバター』(2009年)におけるバーチャルカメラ撮影です。アバターのバーチャルカメラは...