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海外アワードに見る 社会課題と向き合うクリエイターの発想

「ヤングカンヌ」レビュー 世界の同世代の着眼点は?

5月後半から6月初めにかけてオンラインで実施された「Young Lions Competitions」、通称「ヤングカンヌ」。日本チームは惜しくも受賞を逃したが、世界の同世代と戦った出場者らの視点、そしてゴールドを受賞した企画からは、社会課題の解決を目指す施策のヒントを見出せるはずだ。

30歳以下のクリエイターが競い合う世界大会

ヤングカンヌは、カンヌライオンズに付随する30歳以下を対象にしたコンペ形式の大会。今年は出題から発表まで、すべてオンラインで実施された。日本からは今年、マーケターズ部門を除く6部門に、6組12人が参加した。基本的には予選にあたる日本代表選考会をゴールドで通過したペアが、本戦であるヤングカンヌに参戦できる。

各部門で5月後半から6月初めにかけて実施された本戦は、次のような流れで進められた。日本時間の19時~20時頃にオンラインで課題発表がされ、オリエンテーションや質疑応答の時間が設けられる。「ここでどう課題を読み解くかも重要」だと、メディア部門に出場したmonopo Tokyoの高橋健太さん。

その後デザイン・デジタル・メディア・PR・プリント部門では24時間、フィルム部門では72時間の制作時間が設けられた。なおフィルム部門は「2人で企画出し・ロケハン・撮影・演者・編集すべてを担当する」(同部門に出場した電通 萩原志周さん)という。企画案や作品を提出後、一部の部門ではチームに分けられプレゼンをし、審査員からの質疑応答に対応する必要がある。その後6月15日にオンラインで受賞作品が発表された。

審査にあたったのは世界中のクリエイター53人。日本からは、井之上パブリックリレーションズ 尾上玲円奈さん(PR部門)、電通 志村和広さん(デジタル部門)、博報堂 長谷部守彦さん(メディア部門)、Wunderman Thompson Tokyo 鈴木瑛さん(マーケターズ部門)が審査に参加した。

日本チームが取り組んだ課題一覧

デザイン部門(22カ国、44人が参加)

クライアントはWWF。寄付へのお返しとして、ぬいぐるみなどのグッズを送る取り組み「WWFGifts」があるが、ホリデーシーズンの輸送コストの高騰などにより、返礼品のデジタルギフト化を検討している。Z世代・ミレニアル世代をメインターゲットに、寄付を集められるようなデジタルギフトを提案してほしい。

    ゴールド受賞チームの企画
    「MyBeastie」
    (デンマーク)


    エサの購入などで継続的に寄付を集められる、「たまごっち」とコラボした動物の育成アプリの企画。ゴールド、シルバーの企画はほぼ同じ内容だった。結果発表の後日、審査員から個別にフィードバックを受ける機会があったが、今回の審査では特に1人の人が何度も寄付するアイデアが評価されたとのこと。


    日本チームの企画
    「Which Fan Club Will You Join?」


    パンダやコアラなど、動物ごとのWWF公式ファンクラブを立ち上げる企画。好きな動物を選んで入会すると、入会金5$がそのまま寄付になる仕組みに。デジタル会員カードにはシリアルナンバーも記載する。また動物の生息環境をモチーフにしたカラフルなパターンをデザインコンセプトとして導入し、会員カード、Webサイト、SNSなどに展開。

    企画意図
    かわいい動画をはじめ、あらゆる動物のコンテンツに無料でアクセスできる環境の中で、どんなものがデジタルギフトとしてワークするかを考えた。社会への貢献意欲が高く、何を応援しているのかを積極的に表明する、という若年層の特色をもとに、その動物への支援を表明できるWWF公式の動物ファンクラブの設立という企画を立てた。

    今後に活かせるポイント
    事前に過去受賞作を研究し、「アイデアの飛距離よりも、ブランドとしっかりマッチした否定できない正面の案」が勝つという仮説のもと臨んだが、真面目にやったのが裏目に出たと思う。今になって思うのは、何が評価されるかわからないし、一発で当てに行くのがとても難しいコンペなので、のびのびと一番好きな企画を出すのが良いのかも、ということ。

    博報堂ケトル
    プラナー
    小渕朗人さん

    博報堂
    デザイナー
    天畠カルナさん

デジタル部門(46カ国92人が参加)

クライアントはUN Woman。デジタルを活用して、ステレオタイプの有害性について認識させ、行動を促すキャンペーンを考えよ、というもの。キーメッセージは「Say nothing, change nothing」。問題の認識→自分ごと化→行動という3ステップの構造にせよ、というストラテジーも指定されていた。

    ゴールド受賞チームの企画
    「Unstereotype Skins」
    (オーストラリア)


    ゲームに登場する女性キャラクターの80%以上が、美人で露出の多いステレオタイプな女性像を助長しているという着眼点から、ステレオタイプに反するオーダーメイドの「フォートナイト」のアバターをつくるというアイデア。インサイトに発見感があり、展開も綿密に練られていた。


    日本チームの企画
    「Reverse Stereotypes. Get Your Dream!」


    Googleの職業画像検索のアルゴリズムを1日限定で逆転するアイデア。職業名を検索した際、人々が想像するイメージと真逆のジェンダーの画像になるように入れ替えて「女もパイロットになれる」など、ステレオタイプによって可能性が狭められていた害悪性を気付かせる。さらに自分がなりたい職業になれる写真生成サイトもつくり、SNS参加型キャンペーンを展開。

    企画意図
    ステレオタイプがどこに潜んでいるかを考える中で、画像検索結果において男性しか出てこない職業があることに気付いた。アルゴリズムを変えることで、自分と最も関連性が遠いものを提案できる技術があることを知っていたので、その技術を活用しようと考えた。

    今後に活かせるポイント
    FB会では、インサイトやコアアイデア、ボードのデザインを褒められたが、実現性の低さを指摘された。たしかに実際にGoogleのアルゴリズムを変更する場合、サイト作成者や検索者に多大な影響を与えてしまう。Chromeアプリやマイクロサイトなどで展開して、同意した人のみが逆転アルゴリズムで画像検索できる仕組みに落とし込めたらよかった。

    電通
    第4クリエイティブプランニング局
    コピーライター/プランナー
    鎌田明里さん

    電通
    CXCC
    クリエーティブ・テクノロジスト
    中山桃歌さん

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