エンジニアリング分野から生まれた「プロトタイピング」。近年、デザイン思考の分野からも注目を集めている。デザインファームなどを経営しつつ、プロトタイピングの研究と実践に取り組んできた三冨敬太さんが解説する。
並列プロトタイピングの効用
カリフォルニア大学サンディエゴ校准教授でコンピューターサイエンス分野の研究者のSteven Dow博士は、2009年から2011年にかけて、直列プロトタイピングと並列プロトタイピングという2種類のプロトタイピングについての実験を行った結果を示した、重要な論文を発表しています。
実験は次のようなものです。直列プロトタイピングとして、ひとつのアイデアやコンセプトをつくり、フィードバックを受けて、それを修正、ということを5回繰り返す。一方、並列プロトタイピングとして、3つのアイデアやコンセプトを並行してつくり、フィードバックを受け2つに絞り、再度フィードバックを受ける。この直列プロトタイピングと並列プロトタイピングで、どちらが良いパフォーマンスになるかをWebデザインで検証していく、というものです。
結果、並行してプロトタイピングを行う方が、クリック率が向上するなどの良い結果につながったことが示されています。並列プロトタイピングの方が、実施したプロトタイピング回数は少ないにもかかわらず、です。
この論文の内容を受けて、自分でも試してみるために、朝日新聞社の「ビジョン会議」についてのイベントに登壇させていただく機会があったので...