エンジニアリング分野から生まれた「プロトタイピング」。近年、デザイン思考の分野からも注目を集めている。デザインファームなどを経営しつつ、プロトタイピングの研究と実践に取り組んできた三冨敬太さんが解説する。
製品開発の成功確率を高めるには
プロトタイピングは、企画を考えはじめたばかりの初期段階から開発を行う後期段階まで、新しいものを生み出す過程のあらゆるプロセスで行うことが重要です。そして、そのあらゆるプロセスにおいて、特にコミュニケーションを目的としたプロトタイピングを重視することで、良いパフォーマンスに結び付く可能性があることが、現在進めている調査からわかってきました。
たとえば初期段階では、アイデアについてのイメージボードや、現時点で想定されるアイデアのチラシを作成することで、メンバー間でのアイデアに対する認識を共通化することが重要です。先行研究において、メンバーの認識の乖離が発生すると、手戻りのための工数と費用が発生し、投資収益率や成長性に大きな影響を与えることがわかっています。認識の共通化につながるプロトタイピングを行っておくことで、余計な工数や費用の発生が起こることを未然に防ぐことが可能になるのです。
また、プロセスの後半では、コアメンバー以外の社内関係者の認識を共通化させるために、作成したプロトタイプをプロジェクトに関わる会社や部門などに展開し、顧客の利用イメージを...