エンジニアリング分野から生まれた「プロトタイピング」。近年、デザイン思考の分野からも注目を集めている。デザインファームなどを経営しつつ、プロトタイピングの研究と実践に取り組んできた三冨敬太さんが解説する。
ダークホースプロトタイピングの効用
「誰もがみんな、プロトタイピングについて異なることを期待している」。IBMでUX Design Leadを務めるStephanie Houdeさんは、1997年に発表した論文の中でそう述べています。彼女が言うように、プロトタイピングの定義は本当にさまざまです。
たとえば、エンジニアリング分野では、「機能や製造プロセスのテストに使用される本格的なプリプロダクションモデル」。デザイン分野では、「最終成果物が存在する前に作成されたデザインの表現」。Googleでは、「仮説を検証するための実験」とシンプルに表現しています。これらはあくまで一例で、「プロトタイピング」という言葉は、多くの定義が乱立しています。
そして、プロトタイピングについての研究はエンジニアリング分野、デザイン分野から非常に多く行われており、そこで示される効果は「アイデアの発展につながる」「バイアスを取り除く」「モチベーションを高める」など多様です。その中で、「アイデアの発展」について、ひとつ興味深いプロトタイピングをご紹介します。
1999年に...