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デザインの見方

広がり、広げるブルーノ・ムナーリの本

柿崎弓子

『THE CIRCUS IN THE MIST』(邦題:きりのなかのサーカス)Bruno Munari/CORRAINI EDITORE

(左から)『正方形 ブルーノ・ムナーリ かたちの不思議1』、『円形 ブルーノ・ムナーリ かたちの不思議2』、『三角形 ブルーノ・ムナーリ かたちの不思議3』ブルーノ・ムナーリ(著)阿部雅世(訳)/平凡社

美術系の高校を出て、そのまま武蔵野美術大学の視覚デザイン科に進みました。当時ハマっていたのは、アメリカのサブカルチャー。レコードジャケットのデザイン、イベントのフライヤーのレタリングなど、平面上の表現をいかにかっこいいものにするか、を考えていて。そんな頃に、大学の授業で見せてもらったのが、ブルーノ・ムナーリの絵本『きりのなかのサーカス』でした。

初版は1968年のイタリア。ブルーノ・ムナーリが、自身の子どものために制作した本の1冊です。ストーリーは、「きりのなか」を進み、サーカスに行って帰ってくるだけ。「きりのなか」にいる場面にはトレーシングペーパーが、サーカスの場面には鮮やかな色の紙が用いられています。ページをめくると少しずつきりのなかにサーカスが浮かび上がってくる、そんなしくみになっているんです。

初めて見た時のことを、よく覚えています。めくるたびに、空間が、時間が広がっていく衝撃。何かが飛び出したりする立体の絵本ではないのに、経験としては「立体」だったんです。本がトリガーとなり、自分の記憶を呼び覚ましてくれるような感覚。それまで平面の表現に夢中だった自分にとって、表現の幅を広げられた体験でした。授業で見せてもらったのは、確か初版のイタリア語版。当時でも相当貴重なものだったと思います...

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