ヴィヴィッドピンクの箱に収まった小形羊羹。カラフルな水玉柄のパッケージが愛らしい──「とらや」と「ピエール・エルメ・パリ」がコラボレーションした期間限定のスイーツだ。ピエール・エルメ・パリ 日本代表 リシャール・ルデュさんに、魅力的なプロジェクトの経緯を聞きに行った。
本質的なところでの協業
マカロンやチョコレートをはじめとするお菓子はもちろんのこと、パッケージやショップが上質でモダンなのが印象に残る「ピエール・エルメ・パリ」は、スイーツ界のトップブランドとして、押しも押されもせぬ存在だが、日本での地位をゼロから築いたのがリシャールさんだ。一方「とらや」は、約500年に及ぶ歴史を持つ和菓子の老舗であり、羊羹や上生菓子をはじめとする“おいしいお菓子”は折り紙つき。そこに甘んずることなく、時代を映し出すイメージを発信し続けている。国籍は違うものの、価値観が近いトップブランド同士のコラボレーションは、どのような経緯で進んだのか──。
「とらやさんがパリに出している『とらや パリ店』は40周年。うちは日本に上陸して22年。それぞれ異国の地において、自分の国のお菓子や文化を広めようとやってきました。何か一緒にと意気投合したところから始まったプロジェクトです」とリシャールさん。コラボしたお菓子が、それぞれのお店に登場するだけで贅沢なのに、お店で特別メニューのデザートをいただけたり、「虎屋 赤坂ギャラリー」で展覧会を行ったりと、幅も奥行きもあるコラボとして結実した。
冒頭で触れた小形羊羹「イスパハン」は、「ピエール・エルメ・パリ」の代表作とも言える“イスパハン(バラ・ライチ・フランボワーズのフレーバーの組み合わせ)”の風味を生かした羊羹であり、「マカロン アズキ」は、「とらや」のあんこをベースに、ローズ、ライム、フランボワーズの風味をきかせている──両ブランドの主役が技と知恵を惜しみなく出した成果なのだろう。期間限定といわずに定番化してほしい魅力が詰まっている。
「とらやさんの職人とうちのパティシエが、良い意味で触発し合うことで、クオリティの高い成果を出せた」とリシャールさん。表層でなく本質的なところで協業したことで、買い手も嬉しいし、つくり手も喜べるプロジェクトになったのだ...