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防災とアートの融合 矢印をモチーフに街の退避所を日常で知ってもらう

シブヤ・アロープロジェクト

渋谷区では、街を訪れる多くの人に対して“一時退避場所”を知ってもらうことが課題だった。ただ伝えるだけではなく、日常の中で知ってもらうために、アートと防災が融合した作品が生み出されている。

ミック・イタヤさんの作品。

渋谷らしい“矢印アート”が街中に出現

2020年3月、渋谷区のJR東日本高架下に、“矢印”を含んだアート作品が現れた。ミック・イタヤさん、しりあがり寿さん、伊藤桂司さん、小町渉さん、河村康輔さん、植田工さん、ヒロ杉山さんというアーティストの面々の作品だ。訪日観光客含めて多くの人が訪れる渋谷において、一目見て、どこを指しているのかを理解できる記号として矢印を盛り込んだアートにしている。これは、2017年6月に渋谷区共催のもと、渋谷商店会連合会、渋谷駅周辺帰宅困難者対策協議会、渋谷区観光協会などにより発足した「シブヤ・アロープロジェクト」の一環だ。

シブヤ・アロープロジェクトとは、来街者に一時退避場所を知ってもらう手段として、一時退避場所を指す「矢印・サイン」に“シブヤらしさ”をもたせたアート要素を盛り込み、区内の多くの場所に掲示し災害発生時に備えるものだ。このプロジェクトは、初代選曲家、雑誌発行などを行うアーティストの桑原茂一さんの発案企画だ。

桑原さんは「一過性のものではなく、継続的にやれることを実施しようと考えました。渋谷という街は、外から来る人の数が多く、行政がただ示しても誰も動きません。その伝達の役割をアートが担うということは、街の風土にもあっていると思い、実施しました」と話す。

渋谷区では、災害時に来街者が帰宅困難におちいった場合の対策が、喫緊の課題となっていた。区内の小学校や公園などの「一時集合場所」は、長時間滞在できない一時的に様子を見る場所であり、区民と来街者が利用するには十分なスペースではなかった。そこで、特に渋谷駅周辺では発災時に、来街者が一時的に退避する安全な場所として、避難場所などを「一時退避場所」として定めることにした。

これは一時退避という新しい考え方であり、来街者には、帰宅困難者の受入施設が開設されるまでの間、安全に留まれる、一時退避場所を知ってもらう必要がある。そこで、一時退避場所を指す「矢印・サイン」が必要と考えたのだ。しかし、画一的なサインを設置しても街の中に埋もれてしまう。それらの課題を渋谷らしくクリエイティブに解決するにはどうすればよいかと考え、導き出した答えが、「矢印・サインをアート化し、来街者の方々の意識に残るようにすること」だったのだ。

また、本プロジェクトではアプリによる一時退避場所誘導も実施している。ARを活用し、渋谷区の一時退避場所などの方角を矢印アート作品で示すアプリだ。矢印には、“シブヤらしさ”を前面に打ち出したアートデザインを起用。渋谷の雑踏の中においても、埋もれない存在感を発揮し、記憶に残るデザインを3DCGで再現している...

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