静岡県東部、三島市で地域の活性化に取り組む加和太建設。建築業を「地域を元気にする産業」に、三島を「世界が注目する元気なまち」へ。デザイン・ビジュアルの力とともに、挑戦する。
出発点は、建築業の再定義
もともとは地域建設会社として、地元の公共土木工事などを請け負ってきた加和太建設。しかし今、加和太建設が行う取り組みは、土木・建築・不動産事業だけには留まらない。静岡県三島市を紹介するマガジンの発行や、シェアサイクルの導入、マルシェの運営。手がけているのは建物だけでなく「元気なまち」そのものの建設だ。
「地方の建設会社が街の活性化も担うことができる、そんな新しい可能性を示したい」と話すのは、加和太建設 代表取締役社長の河田亮一さん。リクルート、三井住友銀行勤務を経て家業を継いだ、異色の経歴の持ち主でもある。
「地方において、建築業に何ができるのか。突き詰めて考えていくと、地域そのものの活性化が、建築業の需要も高めることにもなる。そこで、建築業を、建物をつくる産業ではなく『地域を元気にする産業』と再定義し、三島の地から、世界が注目する元気なまちをつくることを、経営の軸にすえることにしました」(河田さん)。
これまでも地域活性化のためにさまざまな取り組みを行っていたものの、会社として筋の通った打ち手を行っていくためには、デザインの力が欠かせないと河田さんは考えた。そこを一緒に取り組んでいるのが、MIRACLE 代表取締役/クリエイティブディレクター 中岡美奈子さんだ。
「具体的な打ち手を考える前に、半年ほどかけて定例会を重ね、河田さんの『加和太建設、そして建設業界がどうありたいか』という想いを伺ってきました」(中岡さん)。たとえば、他のまちづくりの手法を知るために、日本中・世界中のさまざまな取り組みを調べた。2人で、気になるまちの視察もした。「実際に足を運んでそれぞれのまちづくりの考え方をご一緒に整理していく中で、河田さんと理想のまちについて、同じイメージ、同じ言葉を持つことができました」と中岡さんは話す。
それは、自然とふれあい、人が行き交うまち。住む人が「自分のまちの好きなところ」を持ち、伝え合うまち。まちの課題を自分ごととして考える人が増えるまち……。
中岡さんは、河田さんが抱いている課題や、実現したいことを、アウトプット化していった。加和太建設がつくっているのは、モノではなく、「元気」であることをスローガンとし、ここでのまちづくりの思いが、空を通じて世界にはばたくよう、強くて深い青を、CIの中心とした。
「まちづくりに熱心に取り組んでいる地域団体でも、具体的な手法を考える段階でつまずいているケースが多々あります。事前にさまざまな事例の情報をインプットしたことや、中岡さんとの対話によって考えが整理されたことで、つまずきがちなところを脱却し、具体的な打ち手が考えられるようになった」と河田さんは振り返る。
こうした対話の中で生まれたのが...