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身近にある暮らし 地域活性化のクリエイティブ事例

五島列島の「椿」を軸にしたブランディングプロジェクト

五島の椿

五島列島に自生する「やぶ椿」を軸に新たな産業を育て、島を活性化する。それが「五島の椿」プロジェクトの目標だ。「五島の椿=椿を使った良質の製品」というイメージを定着させるべく、ブランドの認定マークを軸にしたブランディングを展開している。

島に自生する椿で一大産業を興す

長崎県の西方沖100kmに位置し、5つの大きな島と100を超える小島からなる五島列島。「五島の椿プロジェクト」は、この島に古来より自生する約1000万本の「やぶ椿」を軸に産業を興し、島を活性化させるプロジェクトだ。発起人は、五島列島の島のひとつである福江島出身で、一般財団法人松下財団の代表理事を務める松下剛さん。若者が進学や就職で島を離れ、高齢化や過疎化が進む島の課題を解決して、恩返しがしたいという松下さんの思いがプロジェクトのスピリットになっている。

椿といえば椿の実を絞った「椿油」が有名だが、実を採取できるのは1年のうちわずか2カ月程度。それだけではとても島の主要産業には育たない。そこで実以外の素材を活用できないかと考えた。

その発想から10年近く、産学官民が協力して研究を重ね、葉や種や花などに含まれる優れた成分を発見した。例えば、椿の葉から抽出される「椿葉クチクラ」。これは椿の葉を冬の乾燥から守る天然のワックスで高い保湿効果を持つ。五島市商工会が椿の花から採取した「五島つばき酵母」は、世界で初めて椿から発見された酵母だ。地元ではこの酵母でパンや醤油やワインを開発し、すでに商品化している。

ほかにも、五島の椿から採れる椿油はオレイン酸比率が85%と高いことや、果皮のパウダーを石鹸に配合すると肌に優しいスクラブ効果が得られることなどもわかってきた。五島の椿プロジェクトでは今年2月に、こうした五島の椿をあますことなく使ったスキンケア商品「五島の椿・椿酵母せっけん」と「五島の椿・椿酵母オイル」をプロジェクトの第一弾認定商品として発表した。

五島列島への熱い想いを形に

本プロジェクトはテレビCMと30段の新聞広告とともにローンチした。そこに「五島の椿プロジェクト」椿サポーターとして登場したのが、日本を代表する俳優の吉永小百合さんだ。五島が好きでプライベートでも五島を訪れていた吉永さんが、松下代表の思いに共感して参加することになった。CMは、美しい五島列島 中通島の風景の中で、椿で染めた薄いピンク色の和服を身にまとった吉永小百合さんが一輪の椿を手に、五島と五島の椿を語る。プロジェクトの説明や認定商品には一切触れずに、最後に「五島の椿」の認定マークが映し出されるのみだ。

コピーは詩人でもあるコピーライターの一倉宏さんがソネット形式(14行から成るヨーロッパの定型詩)で書いた。吉永さんの五島への思いを込めた言葉によって、映像は静かながらじんわりと熱が伝わってくる、そのようなCMに仕上がっている。

五島の椿の「本物感」や「上質感」を醸成し...

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