松浦弥太郎さんは多才だ。2002年に立ち上げた本のセレクトショップ「COWBOOKS(カウブックス)」は今も健在。『暮しの手帖』の編集長を務め上げ、今は暮らしにまつわるコンテンツ『くらしのきほん』を発信しつつ、自身の執筆活動も広げている─元気な活動をもっと知りたいと思い、話を聞きにいった。
50歳にして『暮しの手帖』からクックパッドへ
地下鉄の駅から10分ほど、閑静なマンションの一室が松浦さんのオフィスだ。机や椅子がゆったりと置かれていて、絵や写真、オブジェなどが配してある。陽の光の入り方や、木や布などのありようが心地いい。ゆったりした空気と時間が流れている。
松浦さんが『暮しの手帖』の編集長を辞してクックパッドに移った時、「歴史ある雑誌を引き受け、あそこまで成長させたのに」と思っていた。だから話はまずそこから──「編集長を引き受けるにあたって20万部売ると約束していて、いい線まではいっていた。最終号で21万5千部を売り上げることができました」。デジタル領域のコミュニケーションを知りたい、学びたいという思いが、50歳を迎えた松浦さんを次の仕事に向かわせた。
なぜクックパッドだったのか。「『料理で世界に笑顔を増やしたい』という志を持った企業なのに、単に便利なレシピサービスというイメージが強く、志が伝わっていない。「これはもったいないと思い、ファンをつくるデジタルメディアをつくろうと考えたのです」(松浦さん)。立ち上げたのが「くらしのきほん」。「料理を中心にした、暮らしの知恵と学び、大切な心がけを、上質な動画やコンテンツで発信するメディア」として世に送り出した。3ヶ月という短期間でつくり上げるのは容易でなかったが、やりたいと思っていたデジタル領域のコミュニケーションを実践しながら学ぶことができた。
クックパッドを離れるにあたり、松浦さんは「くらしのきほん」を事業譲渡され、株式会社おいしい健康の経営に参画──そこには「病気の予防・管理・ダイエットなどを目的とした、管理栄養士監修のレシピ検索・献立作成サービス」である「おいしい健康」というコンテンツサービスも含まれている …