2019年8月、ユニクロ(ファーストリテイリング)が『LifeWear magazine』というフリーマガジンを創刊した。良質で盛りだくさんな作りで、企業としての意気込みが伝わってくる。ファーストリテイリングの役員としてクリエイティブディレクターを務める木下孝浩さんの話を聞いた。
有明に居を構えたオフィスの心地よさ
訪ねたのは有明にあるユニクロのオフィス。倉庫の上にあると耳にしてはいたのだが、周囲は大きな道路と広大な倉庫が並んでいて少し寂しい雰囲気。ここでいいのだろうかと訝りながら入ったのだが、エレベーターに乗ってオフィスに足を踏み入れると、がらりと世界が切り替わる。
天井の高さを活かし、ゆったりした空間が開けているのだ。ここ数年、働きやすさに配慮したオフィスが増えていて、カフェがあったり広場的な解放スペースがあったり、さまざまな工夫が施されている。説明を聞いて「なるほど」とは思うものの、即座に心地良さが伝わってくるところは、そう多くないと感じてきた。が、ここはちょっと違う。贅を尽くしたラグジュアリーではない上質さ、奇を衒った遊びが排された機能性、細かいところまで行き届いた丁寧さといったものが、五感を通して伝わってくる。
かと言って、新興のベンチャー企業に漂いがちな「とにかくフリー」な空気とも異なる。良い意味でピリリとした緊張感が漂っている。新興企業からトップへ上り詰めてきた製造業の真面目さが、社風のひとつとして定着しているのだろう …