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2020年代のアートディレクション

目指すのは、人と物が動く表現。

関戸貴美子(電通)

キウイのキャラクターが人気のゼスプリの広告をはじめ、Netflix「リラックマとカオルさん」、キリン「氷結」、JINSなどを手がける関戸貴美子さん。広告の王道とも言えるデザインは、どんなところから生まれてきているのだろうか。

電通 アートディレクター 関戸貴美子(せきど・きみこ)
1988年サンフランシスコ生まれ。2010年多摩美術大学グラフィックデザイン学科を卒業、同年電通入社。最近の仕事は、Netflix「リラックマとカオルさん」、大塚製薬「ion water」、Zespri「キウイブラザーズ」など。NYADC、D&AD、SPIKES ASIAなど他多数受賞。

愛されるキャラクターに育ったゼスプリの広告

──入社10年目。この10年間で、関戸さん自身はどんな風に変わってきましたか。

仕事の経験が増えるにつれ、広告が見られる環境や広告を見る人たちをより強く意識するようになりました。そのきっかけとなったのは、アートディレクターの田中元さんとコピーライターの照井晶博さんとご一緒したスポーツくじ「BIG」の仕事。おそらく私の作業中の原稿に足りないものにすぐ気づいたのだと思います。

元さんから「この人たちに伝えるんだからね」と、見せられた1枚の写真。それは、宝くじ売り場に並ぶ人たちを写したものでした。つまり広告を「見る側」にいる大半の人は広告に関心がないし、デザインとは関係ない場所で生きている。そのことを突きつけられました。当たり前のことですが、広告は人に伝わらなければ意味がない。それからですね、改めてマス広告の難しさ面白さに興味を持ちました。そのときに個人的な目標として、マス表現と自分が大事にしてきたクラフトを両立した広告をつくっていけたら、と思うようになりました。

──マスとクラフトの両立とは?

マスは多くの人に伝わる普遍性、クラフトというのは、誰かの私的なこだわりや熱量が表出したものだと思っています。そこには伝わる速度の違いがあります。マスは瞬間的に伝わる速さ、クラフトは長く愛される遅さ、つまり「即効性と遅効性」という相反する時間軸があると思うんです。自分が広告をつくる際には、その2つを1つに融合させた状態にしたいと考えています。商品が売れたとしても、手元に置きたくないようなデザインになってしまったら商品やブランドのファンはつかない。

一方でつくり手である自分のこだわりが表現できたとしても、商品が動かないのでは元も子もない。実際にそれを両立させるのは、なかなかシビアで難しいのですが、諦めたくないです。デザインというものが専門的・選民的なものではなく、一般生活に近くなればいいなとずっと思っていて、広告はとても意味のある場のひとつだと感じています。

──ゼスプリの広告は、まさにマスとクラフトが両立していると感じます。

出稿量が多ければ人や物が動いた時代もあったかと思いますが、今は誰もが好きな情報を探して選べる時代です。選択肢が溢れるなかでは、正しさや効率的なものではなく、誰かの個人的な視点が介在している、その人らしい情熱や愛情などを感じるものに魅力があるのではないでしょうか。複数の人で構成される集合体が伝えたいことを、ツギハギのまま発信しても人格が見えづらく、人の心を動かすのは困難です。だからこそ"メッセージの人格"をアートディレクションして、情報を伝わりやすくすることが大切です …

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