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2020年代のアートディレクション

社会の変化や常に本質の真ん中をつなぐ 強く速く魅力のあるコミュニケーションをつくる姿勢

池澤 樹(博報堂)

国内外のデザイン賞を多数受賞している池澤樹さん。トヨタ・サントリーなどの大規模プロジェクトから自身の個展作品まで「まず自分が本当に好きになれるか、見た人の心の琴線に触れるものがあるか」というチャレンジは共通しているという。

博報堂 池澤 樹(いけざわ・たつき)
1981生まれ。武蔵野美術大学デザイン情報学科卒業。広告会社を経て、博報堂に。主な仕事に、トヨタ「GR」「86」、サントリー「伊右衛門プラス」「黒烏龍茶」、ロッテ「乳酸菌ショコラ」、東急電鉄「のるるん」、H.P.FRANCE「rooms」。主な受賞に、東京ADC賞、JAGDA新人賞、カンヌ国際広告祭 金賞、ONE SHOW 金賞、ADFESTグランプリ、日本パッケージデザイン大賞 銀賞。NYにて個展「Beyond the Craft」開催。

受け手が感じる「手触り」をつくる

──社会人になって、今年で16年目。5年前に博報堂に移りました。

博報堂入社後は、アートディレクターとして大きな変化を感じる5年間でした。20~30代前半は、クライアントへのプレゼンテーションがどうやったらうまくいくか、企画やアイデアをたくさん考えるにはどうしたらいいか、撮影の段取りをどう組むかなど、日々の業務に追われながらも、いろいろなことを経験することができました。アートディレクターとして仕事をしていく上で、基礎固めの時期だったと思います。

最近の仕事ではクライアントが求めるものが大きくなり、単純にデザインやプレゼンができるということだけではなく、その先の商品展開やPRまでを見据えて考えることが求められたり、逆に商品開発段階から参加することも増えています。

──広告メディアも変化しました。

実は僕は武蔵野美術大学デザイン情報学科出身で、学生の頃から当然のごとくWebを触り、自分でもプログラミングを組んでいました。広告のメディアが変わってきたことは確かなのですが、僕にとってはこれまで無かったものが突然出てきたわけではなく、すでにあったものが成熟してきたという感覚です。実際、僕はWebのディレクションもするし、アイデアを考えることも好きですね。

──池澤さんは"グラフィックの人"という印象が強いので、それは少し意外でした。

僕はグラフィックの人になりたかったから、そう言われるとうれしいです(笑)。やはりパッケージデザインでも、Webでも、僕らの基本はグラフィックの基礎能力が重要ですから。僕は学生時代にグラフィックを専門的に勉強したわけではないし、会社に入ってからもプロフェッショナルと言える環境にいたわけではないので、そこがコンプレックスでした。だから、きちんとグラフィックデザインができるようになりたいと思い、自分なりに文字詰めや色の仕組みを勉強しました。

それから、僕は映像を考えるのも好きなんです。前職ではアートディレクターとコピーライター2人でグラフィックはもちろん、ムービーの企画も考え、コンテも描いていました。その作業の中で、考え方の起点が"自分の強み"から入っていくことにだんだん気付いて、僕はCMにしても一枚絵で説明できるシンプルなものが得意だということに気づかされました …

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