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2020年代のアートディレクション

まだみんなが見たことがないところをデザインしていく

YOSHIROTTEN

東京・原宿で開催されたポップアップ・ラジオステーション「ラジオエルメス」のアーティスティック・ディレクションを担当したほか、音楽・ファッションを中心にグラフィックから空間までトータルなアートディレクションを手がける一方、アーティストとしても活動するYOSHIROTTENさん。そのベースには、18歳の頃から現在まで続けているパーソナルワークがある。

クリエイティブスタジオ「YAR」代表 YOSHIROTTEN
東京をベースに活動するグラフィックアーティスト。グラフィック、映像、立体、インスタレーション、音楽など、ジャンルを超えた様々な表現方法での作品制作を行う。また国内外問わず著名ミュージシャンのアートワーク制作、ファッションブランドへのグラフィック提供、広告ビジュアル制作、店舗空間デザインなど、アートディレクター、デザイナーとしても活動している。

PHOTO:山川哲矢

デザイナーとアーティスト活動の両立

──2008年に独立、2015年にクリエイティブスタジオ「YAR」設立されています。

フリーランスとして独立後、今も「YAR」の一員であるADの我妻晃司とファッションデザイナーの3人でRALPH(ラルフ)というデザイン事務所を立ち上げました。そこから仕事の幅が広がり、メンバーも増えてきたことから、2015年にYARを立ち上げたんです。

ラルフとして最初の頃に、スティービー・ワンダーのCDジャケットをデザインしたことは、大きな転機になりました。以前に音楽系が強い事務所にいたこともあり、インディーズや国内のアーティストは手がけていましたが、初の海外アーティストだった上に全世界での発売でした。それ以降この仕事やパーソナルワークを見た海外アーティストからもお声がけいただけるようになりました。

同じ頃にメルセデスベンツ・ファッションウィークのキービジュアルも手がけ、仕事の幅が広がっていきました。僕の得意分野は音楽とファッションですが、もともとタイポグラフィも好きだし、むしろもっといろいろなデザインに携わりたいと考えていました。

──独立してからの10年は、デザインを取り巻く環境やメディアが大きく変化した時でした。

この10年で僕一人ではなく、YARというチームで取り組む仕事が増えました。というのも、グラフィックだけではなく、映像の仕事が増えたことがきっかけです。SNS登場後、特にファッションではグラフィックにとどまらず、映像のルックをつくることが増え、映像のアートディレクションも増えました。そうすると映像ディレクター、美術、照明、さらにはデジタルなどのスタッフが必要となる。彼らと仕事をしていく中で、グラフィック、Web、映像、空間とトータルでデザインを手がける現在のYARの形も出来上がっていきました。

──その一方で、作品制作もYOSHIROTTENさんにとって大きな柱ですね。

僕は18歳の頃から、個人的に作品制作を続けているんです。自分の仕事ではまだできないけれど、どうしてもつくりたいもの。実験的な表現やデザインなど、そのときに自分が「つくりたい」と思ったものをつくってきました。自分にとっては練習、修行のようなもので、いわばデザインのネタづくりとも言えるかもしれません。

発表することを目的にしていたわけではないのですが、それを見た人が「このテイストでやって欲しい」と僕に仕事を依頼してくれるようになり、それも自分の仕事の幅を広げる一助になりました。クライアントの求めることを忠実に再現するだけでは僕がいる意味がないし、誰がやっても似てしまう。でも、僕のスタイルを見て依頼していただけると、「このデザインの雰囲気で」とお任せしていただけることも多いですね。

最近は、アーティストとして制作する案件も増えています …

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