いま世の中で話題になっているCMをつくっている人たちはどのように企画を考え、映像をつくりあげているのか。今回は、オープンハウスをはじめ、話題のCMを手がけている博報堂 吉兼啓介さんです。
自分の現状を投影した主人公
足立:オープンハウスのCMは今年、織田裕二さん扮する犬の「ジョンシリーズ」から長瀬智也さんの「夢見る小学生」に変わりましたね。
吉兼:5年前、ジョンシリーズを立ち上げた際にチームが掲げたテーマは「チャレンジ精神」でした。オープンハウスは、ベンチャー企業。家の中に子ども、両親、祖父母がいて和気あいあいとしているような「普通の家のCMはつくらない」とチームで決めました。だから「ジョンシリーズ」では家のCMなのに家が映っていない上に、家を持ちたいと願う犬のジョンを主人公にするなど、住宅の広告としてはチャレジングな試みになっています。そして5年経って、「ジョンが念願叶って東京の家に住むことができた」というストーリーで完結をさせました。
足立:新CM企画時には、どんな課題が挙げられましたか。
吉兼:メインの課題は「ジョンシリーズ」を超えること。そして僕の中での課題は、戸建てが欲しいと思っている人に勇気を与えることでした。僕も家を買うことを考える年齢になり、飲み会などで「戸建てが欲しい」と言う話をすると、「地震あるかもよ?」「オリンピック前に買うの?」とネガティブな反応をする人が多いんです。
個人的な感覚ですが、都心に住む30~40代は戸建てより、マンションや賃貸でいいと思う人が多いのかもしれません。でも、僕は地方出身で戸建てが当たり前の環境で育ったこともあり、同じように戸建てを買いたいと思っている人たちに勇気を持ってもらいたかったんです。
足立:なるほど。CMの中で「戸建てがほしい」と言う小学生の長瀬くんは、吉兼さん自身を投影しているんですね。
吉兼:その通りです。「転校生篇」では、転校してきた長瀬さんが自己紹介で「大人になったら戸建てがほしい」と言うと、クラスメイトは「戸建てだって」、「変なの」と笑います。そのときに学級委員長の清野菜名さんが「笑わない!」と立ち上がって長瀬さんが勇気をもらうという内容です。
「貯金篇」は遠足のおやつ代も戸建てを買うために我慢して貯金する長瀬さんに、清野さんが「そんなに一人で頑張らなくったっていいじゃん …