クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に生かしているのか。今回は、詩人であり、アート・ユニット「TOLTA」のメンバーである山田亮太さんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。

『新国誠一 works 1952-1977』
新国誠一(著)
(思潮社)
やや大きな「土」という文字が頁の最下部に敷き詰められている。その上部には幾分か小さな「土」が左右に広がっている。さらにその上部にはさらに小さな「土」が並び、そのさらに上部には……。こんな風にして、無数の「土」という文字で矩形が形作られている。矩形の上の右端にごく小さな文字が載っている。極めて小さいから、顔を近づけよく目をこらして初めてその文字が判別できる。「墓」と書かれている。「土」と「墓」。「大地」と題されたこの詩は、以上の二種類の文字だけで構成されている。
詩と美術の境界に位置する《視覚詩》の詩人である新国誠一の作品が、いまなお新鮮な驚きをもたらすのは、作品の構成要素である文字=言葉が内包する意味の領域を決して手放していないためであるだろう。本書には、新国の代表的な視覚詩が網羅されているのみならず、習作期の仕事も豊富に含まれている …