今年4月、JR・近鉄天理駅の駅前広場としてオープンした「CoFuFun(コフフン)」。形状も機能も、これまでの公共施設のイメージをひっくり返す、新しさと自由に満ちている。この開発プロジェクトについて、天理市長の並河健さんと、デザインを担当したnendoの佐藤オオキさんに話を聞いた。
街のコンテンツを「再発見」する場
天理駅の目の前に現れた、真っ白で不思議な円形状の建物群。小山のような形の屋根をかぶった建物もあれば、逆にすりばち状に掘り下げた中で遊ぶ遊具もある。建物の中には、観光案内所、カフェ、レンタサイクルショップなどがあり、外には野外ステージとして使える場所もある。近隣住民の憩いの場やイベント会場として大いに活用され、日々にぎわいを見せている。
天理駅前広場「コフフン」のプロジェクトがスタートしたのは2014年のこと。その背景には、天理市長の並河健さんが抱く問題意識があった。「天理市の出身ではない人間の目線で見ると、天理市には『もったいない』と思うことがたくさんあるんです。柔道やラグビーの日本代表を多数輩出する天理大学のあるスポーツが盛んな市ですし、他にも音楽や歴史文化など魅力的なコンテンツが多数あります。でも、地元の人ですら、そのことを知らなかったりする。天理市に住んだり、訪れるための魅力として発信できるコンテンツはあるのに、生かしきれていないと感じていました」。
そして、同様に“生かしきれていないもの”として並河市長の目に映ったのが、天理駅前の広場だった。「天理駅前には広大なスペースがありましたが、特に何もなく殺風景な景色が広がっていました。ここを子どもの遊び場を中心に多世代が集まる場に変え、天理市に眠る魅力的なコンテンツを共有し、再発見できる場所にしたいと思ったんです。それに、私たち行政側には、子育て支援や高齢者施策など、市民に伝えたい活動が多くあります。しかし、行政発信の情報というのはたいてい伝わらないもの。天理駅前広場は行政に興味のない人も多数行き交う場所ですから、工夫次第で絶好の情報発信拠点にもなると思いました」。
こうして天理市では、商店街のメンバーや大学関係者など、地元の人たちと広場のあり方を議論する協議会を発足した。「福祉、子育て、産業振興、観光発信…など広場にほしい要素がたくさん出てきました。それらの機能を詰め込むだけでは、まとまった1つの空間にはなりません。ただ、言葉で聞くとばらばらなこれらの機能も、実は人の活動としてはつながっているのでは、という勝手な思いがありました。空間デザインがしっかりできれば、複数の機能を違和感なく同居させ、むしろ相乗効果を上げられるのではないかと。そのためのプランニングができるプロの力が必要でした」。9社コンペの結果、圧倒的な票を得てnendoの案に決まったという。
“ゆるさ”と“おおらかさ”のデザイン
佐藤さんは、提案した案を次のように説明する。「これまでの建築は、食べる場所、歩く場所と、空間はそれぞれ明確な目的のもとに作られていました ...