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アイデアで活性化 地域×クリエイターのプロジェクト

若者の行動をそっと後押しする「結婚手帖」

前橋市「前橋結婚手帖」

日本で社会問題の1つとなっている、未婚率の上昇。全国の自治体がこの問題に頭を抱える中で、前橋市が前例のない取り組みをはじめた。

山本龍(やまもと・りゅう)(右)
前橋市長。1959年群馬県吾妻郡草津町生まれ。早稲田大学卒。小渕恵三代議士秘書、群馬県議会議員を経て、2012年から現職。愛読書は、P.ドラッガーの「断絶の時代」。

筧裕介(かけい・ゆうすけ)(左)
1975年生まれ。一橋大学社会学部卒業。東京大学大学院工学系研究科修了。2008年issue+design設立。社会課題解決のためのデザイン領域の研究、実践に取り組む。

結婚への20個の障壁とその解決策を提示

若者世代の未婚が大きな社会問題になっている。国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、50歳までに結婚を一度もしたことがない人の割合を示す「生涯未婚率」は男性が23.37%、女性は14.06%で、1980年と比べると男性が約10倍、女性が約3倍に増加している。

全国の自治体が未婚率上昇の問題を抱える現在、前橋市もその例外ではない。前橋市が20~34歳の女性を対象に行った意識調査では、「結婚願望がある」と答えた人が85%と非常に高かった。同時に結婚に向けて取り組んだことは「特にない」と答えた人も57%に上った。希望はあるが実現できていない、具体的な行動に至っていない現状が浮き彫りになった。

この結果に対して山本龍市長は「結婚するかしないかは個人の自由であることは大前提ですが、希望しているのにできない人が多いという課題は地域として解決すべき。行政として支援したいと考えました」と話す。

婚活イベントやセミナーであれば、これまでもさまざまな自治体が取り組んでいる。しかし、今回、前橋市が行ったのは、「本」の刊行だ。その名も『前橋結婚手帖』。制作したのは、デザインの力で地域課題の解決を目指すNPO法人issue+designだ。

昨年10月に官民連携プロジェクト「前橋みらい家族ラボ」を前橋市と協働で発足し、「前橋市で結婚し、出産・子育て、家族として暮らすことの価値を高める」ための活動に取り組んできた経緯がある。本書をつくるにあたり、前橋みらい家族ラボでは結婚願望のある10人の未婚男女にデプスインタビューを行った。その結果、「結婚への20個の障壁」が導き出されたという。

本の中では、これらを「人生プラン」「出会い」「男女の仲」「結婚とお金」「結婚の決断」の5つの大きな章立てに分類し、結婚への障壁を乗り越えるための22の具体的なアクションを提案している。各テーマには羊やペンギンなど動物の主人公が登場し、前橋を舞台に物語が進んでいく。

例えば、インタビューで「お金がないから結婚できない」という悩みが多かったことから設けられた「結婚とお金」の章では、実際に結婚にはいくらお金がかかるのか、お金をかけずに結婚式をする方法、さらに前橋市が実施する夫婦支援サービスを流れの中で紹介している ...

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