4年目を迎えた「ものづくり産地の祭典」の新展開
今年の10月に4年目を迎える、新潟県 三条市のイベント「燕三条 工場の祭典」。今年は金属加工の「工場」に加えて、農業の「耕場」が加わりパワーアップしている。全体監修を行うmethod 山田遊さんとアートディレクションを担当した一人、SPREADの小林弘和さんに話を聞いた。
地域の可能性を引き出すクリエイティブ
鳥取市や松山市の仕事など、地域活性化の仕事に多数携わってきたPOPSの田中淳一さん。地元の人には発見できない地域の魅力も、外から来たよそ者だから発見できるという。
一昨年にアサツー ディ・ケイから独立してPOPSを立ち上げました。アサツーディ・ケイでは大手メーカーなどの大きなキャンペーンを多く担当しており、仕事は充実していたのですが、コンペ続き、徹夜続きの働き方にふと疑問を感じてしまったんです。「自分たちのしているこの仕事は、一体何に結びついているのだろう?」と。
そんな頃に海外広告賞の審査員をする機会があり、世界の事例を見て「コミュニケーションも社会の課題を解決する手段になるんだ」と気づきを得る機会がありました。その後3.11が起き、東北や自分の出身県の宮崎のような地元で一生懸命頑張っている人に対して、自分は一体何ができるのかと考えるようになったんです。
その後初めて手がけた地域クライアントの仕事が、2011年に手がけた今治の「七幅タオル」のアニメーションCMです。それまで自社から情報発信をしたことのなかった地場企業が初めて公開したアニメーションに、海外からも反響が届きました。クライアントもそこに大きな手応えを感じていて、自分がこういう場所で必要とされていると感じたんです。
この仕事がきっかけとなり、横のつながりで地域の仕事が広がっていきました。そして2014年に44歳で独立。今では、全体の約8割を地域の仕事(自治体、地域のクライアント)が占めるまでになっています。
地域のキャンペーンを企画する際に気を付けているのは、こちらの考えを押し付けないことです。「今はこういうものがいいんです」や「このくらいやらないと目立ちませんよ」ということは極力言いません。
一時期、自治体の自虐ネタが多く登場しましたよね。確かに全国からは注目されるかもしれない。けれど、地元にいる方は、実は結構寂しい思いをしていたりします。目立たなければいけないけれど、地元のプライドを損なってまでやることはない。そのバランスには非常に気を使っていますし、地元の方に積極的に参加してもらえるフォーマットにするように心がけています。
2014年に開始した「すごい!鳥取市」は、鳥取市のブランディングキャンペーンです。「鳥取県には“スタバ”はないけど、日本一の“ 砂場(スナバ)”はある」とかつて平井伸治県知事が言って話題になりましたが、地元の方々も、特に若い人ほど「ここには何もない」と言うんです。ならばということで、一番最初に提案したのは「なにもない市鳥取市」だったのですが、さすがにこれは怒られて(笑)。そこから、逆に自分たちですごいところを見つけようという発想で「すごい!鳥取市」を企画しました。
鳥取市民とワークショップを通じて見つけた市の魅力100点をWebサイトで紹介する企画なんですが、「何もない」と言っていたのに、実は掘り起こしていくと色々なネタが出てくるんです。よく、地域のいいところを尋ねられると、「食べ物がおいしくて、風光明媚で、温泉があって」…と地元の方はどこでも同じようなことを言います。けれど、枝葉末節に入っていくと、その地域の独自の面白さが見つかるんです。カメラマンは浅田政志さんで、浅田さんは地域が大好き。町の人の中にすっと入っていって、明るい表情を撮るのがとてもうまい。その抜群の演出力もこのキャンぺーンの大きな力になっています。
2年目の2015年には鳥取市公式フォトガイドブック『すごい! 鳥取市 100 SUGO!BOOK』も出版されました。このガイドブックにはクーポンもついていて、本を片手に旅行客が鳥取市内を巡れるようになっています。1年目はシティブランディングを目的にし、2年目は観光に力を入れた形です。
そして3年目を迎える今年9月からは、市からの要請による移住定住促進施策として ...