「ロケットも、文房具から生まれた。」(2006年、岩崎俊一)他
コピーライターになって最初の仕事。それは広告をつくることではなく、消すことだった。「新聞広告の日」を祝う特別企画のために新聞の広告欄をすべて白く塗りつぶし、先輩たちがデザインを検証できるようにする実に新人らしい仕事。
東日本旅客鉄道/1993年
○C/太田恵美
サントリー「オールド」/1988年
○C/小野田隆雄
サントリー「オールド」/1994年
○C/小野田隆雄
「恋は、遠い日の花火ではない。」オールドのCMが流れていたころ、僕は青森の田舎の高校生でした。飲めもしないウイスキーなのに。自分とは年代の違う男女のストーリーなのに。そのコピーが好きでした。酒が飲めないからこそ、まだ見ぬ大人の世界に憧れたのかもしれません。ウイスキーのかわりにリンゴジュースなどを飲んで悶々としていました。
その後、上京して大学に入ったものの、友達は少なくお金もなく、大学時代は旅行した記憶が一度しかありません。友人たちとの貴重な旅の行き先は京都でした。まさに「そうだ 京都、行こう。」という言葉のような、思いつきの旅行だったような気がします。あの名コピーがなければ、その一度の旅行さえなかったかもしれません。
大学四年になってもまともに就職活動しない僕を見かね、京都にも一緒に行った足立くんが『コピー年鑑』というぶ厚い本を紹介してくれました。短いのに心に刺さる言葉の数々、短い言葉を書けばメシが食える …