01 映画「クロニクル」は、スーパーパワーを獲得した三人の高校生の物語。
彼には空を飛ぶパワーもある。それを表現するために、シンクモドはマンハッタンの上空に人間そっくりのダミー(人形)を飛ばし、ニューヨーカーを驚かせた。
鳥か、飛行機か、いや人間だ!
映画「スーパーマン」で有名になったセリフである。2012年1月のある日、ニューヨーカーたちはこれと同じセリフを叫びながら上空を見上げた。よく晴れた青空をバックに、何やら急速度で飛行している。鳥でも飛行機でもない。人間ではないか!スマホのカメラで写真を撮る人、忙しげにツィッターにメッセージを送る人、時を待たず報道関係者のカメラを積んだトラックが数台やってくる...。130を越すニュースメディアがこの事件を報道し、YouTubeに搭載されたビデオは400万を越すヒットを記録し、ソーシャルメディアを蜂の巣をつついたように騒がせたこの事件を覚えている人は多いはず。そして、いまでは誰でも、これがSF映画「クロニクル」の販促スタントであることを知っているはずだ。
ニュー・バイラルビデオ・エージェンシー
野火のように広がるこういったバイラル・ビデオは、そう簡単に生まれない。どんなに綿密にプランをたてても、バイラル・ビデオが生まれるのは極めて稀だ。バイラル・ビデオを主業とする勇敢な会社はどれもすぐ消え、消えては誕生するという泡のような存在であった。
ところが最近、YouTubeで数百万ヒットを獲得するバイラル・ビデオ専門広告代理店がいくつか出現している。最もよく知られているのは、NYにオフイスを持つ「シンクモド」(ThinkModo)。映画「クロニクル」の“フライング・マン”もこの会社の制作である。
NBCの深夜番組のプロデューサーをしていたジェイムズ・パーセリーと、映画監督のマイケル・クレベッカという2人の青年によって、同社は始められた。「ソーシャルメディアがマーケティング界を牛耳っている。若者が最も親しく接しているのはYouTube。この二つの事実を結びつけたところにビジネスがある」と二人は考えた。だが、彼らの考えをすぐ理解してくれる広告主はいなかった。そのうち、まもなく封切られる映画「リミットレス」の販促アイデアを探しているという噂を聞いた2人は ...