IDEA AND CREATIVITY
クリエイティブの専門メディア

           

CREATIVE NEWS

長嶋りかこ、木住野彰悟のファッションブランドほか

01 長嶋りかこさんのブランド「HUMAN NATURE」より。

キギ 渡邉良重さんが立ち上げたブランド「CACUMA」をはじめ、グラフィックデザイナーが本格的にファッションに取り組みはじめている。その思いや考えはどんなところにあるのだろうか。

プロダクトとしての服

2013年10月にギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催された「長嶋りかこ展Between human and nature」。この会場には、博報堂 長嶋りかこさんがデザインした8型の洋服が並んだ。その服はといえば、首元でTシャツを丸めたように見えていたのに、伸ばすと1枚の長袖ワンピースになったり、マントのようなシルエットの一部を絞るとノースリーブのワンピースになったり――と、着る人が少し手を加えると全く違うスタイルを見せる。「買った人が何か一つ手を加えられる余地がある服。そこにポテンシャルを感じたんですが、ファッションではなくグラフィックデザインをやっている自分だからこそできる服、見せ方、考え方、世界観にしたいと思いました」と長嶋さん。

服をつくり始めた背景には、これまでさまざまなファッションブランドのグラフィックデザインを手がけてきたことにある。仕事をする度に、そのデザインをリスペクトしながらも、「自分だったら、こういう服をつくるのに」という思いがあった。こうした仕事と並行して、アーティスト宮島達男さんたちとの核なき世界の実現に向けて署名活動をするプロジェクト「PEACESHADOW PROJECT」を始めたことで、ものづくりの時間軸に対するものさしが変わり始めたという。「広告の仕事はサイクルが早いし、時代を意識しなくてはいけない。でも、PEACE SHADOW PROJECTには流行り廃りの意識はなく、もっと長くゆっくりとした、違う時間軸を意識するようになったんです」。そんな経験から長嶋さんが考えはじめたのが、「ファッションの文脈ではない、プロダクトとしての服」。シーズンや流行に左右、消費されることなく、ずっと付き合える服をつくる。そのためには、どんな服であるべきかと考え、生まれたのが今回のデザインだ。「いまの時代は鍋一つとっても細分化されている。でも、本当はいろんな鍋を使うのではなく、鍋一つでなんでもできてしまう腕を持っている方がずっといいんじゃないかと思うんです。服も1枚あったらどんな風にでも着ることができる、そういうクリエイションを着る人自身が持てたら面白いんじゃないかと」。

長嶋さんの発想は来場者に受け入れられ、用意した服はほぼ完売。ファション関係者からも注目を集め、春にはギャラリーとは違う場での展示、発売も予定されている。「続けてみないと見えてこないことがある。まずは1年に1度のペースで発表していきたい」。

ものとして機能し、着て楽しいニット

02 木住野彰悟さんのブランド「it knit」より。6Dのサイト内にあるショップを経由し、Amazonで販売中。 http://www.6d-k.com/shop/

「TOKYO DESIGNERS WEEK」プロ展の会場では、入口近くに展示されたニットのセーターに多くの人が足を止めた。そのセーターの柄にはモザイクがかかっている。目をグッと凝らしてみるとあの人にも見えるし、この人にも見える...。「自分の頭の中にはちゃんとイメージがあるのに、相手に伝えるときについ面倒になって“あの人、あの人”と抽象的に話してしまうことってありますよね。この柄は、そんな相手の頭の中にあるイメージに近いと思います」と話すのは、6D 木住野彰悟さん。08年に自社で企画、開発したデザインクラッカーを発売後、さまざまなプロダクトの制作に挑戦してきた。そのきっかけは、「自分のデザインが本当に機能する場はどこにあるのだろう」と考えたことから。いろいろと模索する中で、いつしかその答えが「服」にあるのではないかと思うようになった。

「仕事柄、Tシャツにプリントするグラフィックをデザインしたことは何度もあります。これまでずっと“その絵はプリントされているだけで素材に馴染んでいない”ということが、自分の中ですっきりしませんでした。服というのは本来、色、柄、素材が一つになって形になるもの、それが実現できるのはニット製品だと思ったんです」。しかし、工場でニットを生産する体制を素人が構築するのは難しく、生産数に対してコストも割高になる。半ばあきらめていたとき、とある縁からTOMORROWLANDとのコラボレーションが実現。自社でニットブランド「it knit(イット ニット)」を立ち上げた。

当然のことながら、着心地がいいだけのニットでは、グラフィックデザイナーがつくる意味がない。絵として個性的になりすぎず、抽象的だけれど魅力のある柄は何かと考え、たどりついたのがモザイク模様だった。「この見え方にたどりつくまで試行錯誤の連続。グラフィックとは違う色や柄の出し方を経験して、自分の頭の中も大きく変わりました。ブランドとしてまだ課題はありますが、今回の経験を経て、自分の中で“ものとして機能し、着て楽しいものをつくる”という方向性が見えてきました」。

「it knit」は12月10日~25日にTOMORROWLAND 渋谷店で、同じく23日までTOMORROWLAND LimitedShop 名古屋ラシックで販売される。



010_03.jpg

03 長嶋りかこさん
04 木住野彰悟さん

無料で読める『本日の記事』をメールでお届けいたします。
必要なメルマガをチェックするだけの簡単登録です。

お得なセットプランへの申込みはこちら

CREATIVE NEWS の記事一覧

長嶋りかこ、木住野彰悟のファッションブランドほか(この記事です)
今月の展覧会、広告賞、最新ニュース
今月の展覧会、広告賞、最新ニュース
今月の展覧会、広告賞、最新ニュース

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
ブレーンTopへ戻る