金色はやっぱり特別
今回は中国人にとって特別な価値を持つ、富の象徴「金色」について触れたいと思う。最近の話題では、アップル社が発売したiPhone5Sゴールドは目下売切れ中。武漢市では、販売開始から10分足らずで完売。香港では入荷台数が元々少なく、ダフ屋に買い占められる事態にも。SNSなどのソーシャルメディアでは「ゴールドタイプを買わなければ、5なのか5Sなのかわかってもらえない」などといった冗談が聞こえてくるほどで、iPhone5を5Sゴールドにカスタムできる、お手軽ステッカーも飛ぶように売れている。
また、このゴールドタイプには「土豪金(成り金色/田舎のボス色)」というニックネームもつけられ、新しいステータスシンボルと見なされている。結果的に「金色」である特別感に加えて、さらに付加価値を加えることに成功したともいえるが、アップル社は中国人の「金色」に対する価値観を過小認識していたともいえるだろう。ここで、これまでの携帯電話の人気機種を改めて振り返ると、中国市場では「金色」が人気を集めていたことがわかる。
まずは、モトローラの折りたたみ式のスマートフォン。ターゲットをビジネスエリートに絞り込み、タッチペンもキラキラな「金色」の金色仕立てプロダクト。これも人気を博した。
そして、国産端末メーカー金立の携帯電話も大いに流行した。金立「語音王」はテレビCMで“レベルが高いのではない、とにかく高いのだ”“超ゴージャス”と繰り返し宣伝。同機には、当時999元(約1万3千円)の著名ブランドのデジタルビデオカメラがついており、そちらも話題になった。
iPhone5Sゴールドの一件を含め、ステータス性が加味されるプロダクトにおいて、中国市場では、「金色」は特別な価値が付加されるという事実を知ってはいたものの、今回の一件ではそれを改めて実感させられた。
そこには、元来、富の象徴として「金」を身につける、傍らに置く中国人の風習、文化的背景がある。日本人にも「カワイイ」という現代日本人の日本人らしい独特な感性と文化的背景があるように、現代中国人にも「金色」に反応してしまう独特な感性と文化的背景が生きている。
廣田真也(ひろた・まさや)grand design (Shanghai) Ltd. Creative Director。1979年生まれ。東京の広告企画制作プロダクションを経て、2009年grand designの立ち上げに参加。上海在住。 |