地域を活性化させるプロジェクトに携わる筆者が、リレー形式で登場する本シリーズ。今回は、公募で選ばれ、廃止寸前の千葉県・いすみ鉄道を立て直した鳥塚亮社長が、地域ならではの強みをどのように捉え、活かしているのかを紹介します。

千葉県・いすみ鉄道の「ムーミン列車」は女性が来たくなる雰囲気をつくるための施策だ。
都会人にとっての憧れの的
ローカル線を取り上げたテレビの旅番組は視聴率が伸びる、雑誌も売れ行きが良くなるという事実があります。なぜなら、都会に住む人がご覧になるからです。
不思議だと思いませんか。都会の人たちは毎朝、満員電車に揺られて通勤しています。満員電車で帰宅して、「あぁ疲れた」と言って電車が出てくるテレビを好んで観ているのです。それも、鉄道マニアでもない普通の方々がローカル線の電車が出てくる番組を見るのです。
この現象が示すのは、ローカル線は単なる移動手段としての電車ではないということだと思います。つまり、都会の人たちはローカル線という言葉を聞くと、駅弁や地域の名産品、地酒、美しい景色、温泉、そして人々の人情といった、地域の様々なものを思い浮かべて「良いところだな。乗ってみたいなぁ。行ってみたいなぁ」と思いを馳せているのではないでしょうか。
ローカル線が持つ雰囲気やそこに展開される情景は、都会の人たちの憧れの的なのです。だからローカル線のテレビ番組の視聴率が上がる。すなわち、ローカル線が走る地域はその路線を上手く使うことで、地域を分かりやすく表現することができる、地域を宣伝することができるわけです。
ところが、都会人が憧れのまなざしで見ているにもかかわらず、田舎では自分たちが住んでいる町を「こんなところはもうだめだ」と思っているケースがほとんどではないでしょうか。過疎化が進み、少子高齢化で人口が減り続けている田舎の町としては、自分たちの地域に自信が持てなくなってきていることは理解できます。しかし ...