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青山デザイン会議

世代・国境を越えるマンガのコミュニケーション力

坪井卓/福田里香/山内康裕

この数年、映画やドラマ、アニメ、ゲーム、CMなど大規模なコンテンツビジネスの元ネタとなっているマンガ。さまざまなメディアで採用されるのは、エンターテインメント性の高さや影響力はもちろん、趣味や消費が多様化する今の時代においても子どもから大人までの幅広い読者を結びつける共通(共有)感覚や同時代性、ノスタルジーを覚えるからではないでしょうか。最近ではその共通(共有)感覚をもとに、二世代をターゲットにした実写映画化が増え、マンガのキャラクターが企業の販促活動にタレントのように活躍しています。企業が消費者に直接情報を伝えるよりも、間にキャラクターを介することで伝わりやすく、受け入れられやすいからです。

企業にとっては根強いファン層の獲得と対象ターゲットに広くリーチできる点も魅力。はじめからそこまでの拡がりを視野に作品をつくる場合もあるようです。そういったキャラクター・ビジネスの一方で、アートやファッション、フードなどカルチャーの分野にもマンガは強く影響を与えています。マンガ文化はいまや日本に留まらず、世界共通語(MANGA)としてアジアを中心にヨーロッパ、アメリカ…とコアなファンが増え続けています。世代や国境を越えるマンガのコミュニケーション力について3人の識者が話し合います。

マンガコラボが広まってきた背景

坪井 広告の現場におけるマンガの立ち位置は、確実に変わってきています。理由の一つは技術の向上です。たとえば、スバルフォレスターの『進撃の巨人』コラボCMも、CG技術の向上なくしては、きっとあの迫力は望めませんでした。昔なら莫大な予算や時間を掛けなければ実現できなかったものが、技術革新でできるようになりました。企画する立場としても提案しやすい状況になってきています。

福田 『 寄生獣』も実写になる時代ですからね。たしかに今の技術なら、ミギーをうまく再現できそうです。

坪井 マンガのコラボ企画が増えたもう一つの理由としては、子どもの頃からマンガを読んで育ってきた世代が、ビジネスリーダーとして活躍していることもあるかと。10年前にマンガのキャラクターを起用した広告表現を提案したときと今とでは、企画の通るスピードが違うんです。つまり、クライアント企業の担当者にマンガ好きが増えているんですよね。

山内 さまざまな媒体で企画する好きなマンガやキャラクターのランキングを見ると顕著ですが、50歳前後を境に作品の傾向が変わります。40代以下はわりと同じなんですよ。特に男性は永遠に少年の心を持ち続けるのか、10代で好きだったマンガが、20代以降もそのまま持ち上がっていきます。もちろん個人差はありますが、「マンガを読むとバカになる」と親に言われていた世代とそれ以降の世代で分かれるかもしれません。

坪井 あと、近年の「マンガは日本の誇れるコンテンツである」という社会認識の向上も確実に追い風になっていますよね。

福田 世の中全体の流れとしても、2000年から急速に変わってきたと思うんです。たぶん、マンガ世代の雑誌編集者が企画を通せる時代になったのでは。それまではマンガっておしゃれ女子文化の中では黙殺されていて、決して女性誌の紙面で特集される対象ではなかった。例外的に早かったのは「Olive」誌で1994年あたりで記事にしてたくらいかな。

山内 たしかに。気になるのは、海外からみたマンガの印象と日本人が思うマンガ文化とのギャップですね。海外からみたら、サムライもJ-POPもマンガも、同じ日本のポップカルチャーなのに日本人にとっては別物。マンガは、2000年に京都精華大学に日本で初めてのマンガ学科ができて、やっと文化水準が上がったのかなと思います。

福田 “おしゃれ”“かっこいい”のカルチャーとマンガカルチャーは相容れないものでした。実際BL(ボーイズラブ)の話題で盛り上がれるオタク系女子と、素敵な写真の料理本が好きなほっこり生活系女子は、まったく会話にならないほどお互いの趣味範囲が被らないので、本来「まぜるな危険」です。隠しているつもりもないけど、その両方が好きな私は、マイノリティ。どっちつかずのこうもりみたいだなあってずっと思っていました。でも最近は少しずつ、若い世代からその境界も融合してきている気がします。

ムーブメントの土台は同人活動にあり?

坪井 2000年からの急な変化というのは、何がきっかけだったんでしょうか?

福田 コミケとコミティアの影響はかなり大きいと思いますよ。特に女性作家に関しては。著作権の問題もあって表面に出にくいテーマなんですが、いわゆる商業作品の2次創作、BL同人誌作家さんが、商業誌でも活躍しはじめるのが2000年代。実はコミケは、参加者の70%近くが女性です。その層の購買力を侮ると商売としては失敗しますよ。出版社も影響力を熟知しているから、今のところ二次創作を容認。本気で潰したら、どんなに人気のある作品でも一気に下火になると思います。

山内 なるほど、その影響もありますね。

福田 そのあとネットが広がって、ブログなどでコミュニケーションを取りやすくなりました。出版社もそこから才能を見つけやすくなったと思うんです。そして最新の狩り場は、投稿サイトのpixivですね。

坪井 上京したばかりの頃、友人に誘われてはじめてコミケに行ったときは衝撃でした。同人誌のよさがよくわからず、正直抵抗がありました。でも今はまったく違う感覚ですね。出版社や企業にとっても、企業ブースでの出展が一大事業になっています。女性作家さんが増えてきたのはいつ頃ですか?

福田 コミケに関していえば ...

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