生成AIの台頭により、業務の効率化が実現するとともに、メディアの在り方や、企業と生活者の接点のつくりかたをも変えるような大きなインパクトが予測されます。マーケターは、これらの技術をどのように受け入れ、業務に生かしていけばよいのでしょうか。7回目となる今回は、画像に関する生成AIについて、富士通の山根宏彰氏が解説します。
アイデアや想像力を画像化する生成AIの可能性
これまで主に、言語系生成AIの話を取り上げてきたが、画像に関する生成AIについても触れておきたい。最近、「○○が描きたい」というテキストを入れるだけで希望の画像を生成できるAIサービスが人気を博している。「ハムスターが晴れ着で結婚式」などの入力から即座にイラストが出力される。DALL・EやStable Diffusionといった最新の画像生成AIを使えば、奇抜な画像を手軽に作成できる。自分のアイデアや想像力を画像化する手段として大きな支持を集めてきている。
この技術の応用範囲は広く、例えば教育やエンタテインメント分野での利用が考えられる。教師が歴史的な出来事や抽象的な概念を説明する際に、リアルタイムで関連するイメージを生成して生徒の理解を助けることができる。また、物語を紡ぐストーリーテリングの文脈や映像制作では、脚本家や監督が描いているシーンを視覚化し、製作プロセスを加速させることが可能になる。
さらに、これらのAIサービスは個人に向けて開かれているとも言える。創造性を発揮できる環境が整ったため、趣味のイラスト作成やデザイン、加えてファッションやインテリアデザインなど、多岐にわたる分野で個人が自由にアイデアを形にできるようになる。個々のユーザーは自分の思い描く風景やキャラクター、様々なスタイルのアートワークを簡単に作成でき、それをSNSで共有することも可能だ。
各業界の活用事例から見るビジネス応用に向けた展望
クリエイティブ業界においても、同様の画像生成AIへの関心が高まっている。ゲームやアニメの背景制作、印刷物のイラストレーションなど、発注する画像をAIで効率的に作成し、コストと労力を削減できるメリットが生じるためだ。画像生成AIのビジネス応用は、その効率性と多様性から、多くの業界で注目されている。
特に、広告業界、ファッション業界、ゲーム開発などで、その影響は顕著である。広告業界では、画像生成AIを用いたバナー広告の作成が行われており、一部のケースではクリック率が約1.8倍に増加したとの報告がある。これは、AIが生成する多様で惹きつける力の高い画像が、消費者の注意を引く効果があることを示している(日経XTREND、2022年10月18日)。
ファッション業界では、ECサイトの商品画像生成にAI画像生成技術が活用されつつある。H&Mのようなアパレル企業は、AIを使って色や柄、モデルのポーズを変化させた数多くのバリエーション画像を作成している。この技術により...