生成AIの台頭により、業務の効率化が実現するとともに、メディアの在り方や、企業と生活者の接点のつくりかたをも変えるような大きなインパクトが予測されます。マーケターは、これらの技術をどのように受け入れ、業務に生かしていけばよいのでしょうか。6回目となる今回は、言語生成モデルの現在地について、富士通の山根宏彰氏が解説します。
ChatGPT、Claude、Gemini 3つの言語系生成AIの現在地
これまで、マーケティングやビジネスで用いられているコンセプトをChatGPTに適用した具体例や、データ分析、KPIへの応用などを紹介した。前回で、クリエイティブの一部を担当するエキスパートが生成系AIに取って代わられつつあり、データに基づく問題設定が重要となってきていることに触れた。今回は、それらの目的を達成するために使われるであろう言語生成モデルについて、改めて最近のアップデートを含めて触れてみたいと思う。まずはCEOの解任ドタバタ劇で世間を賑わせた、OpenAIのChatGPTからみていく。
【ChatGPT】
先日のアップデートで、ChatGPT4に対して、ChatGPT4-V(VはVision、視覚のこと)がリリースされることで、画像に対する問題解決能力が加えられた。エンドユーザーにおいても高精度の画像認識が利用できるようになり、例えば中小企業でも画像認識モデルが手軽に利用できる道が開けたといえる。
さらに、OpenAIが今回新たに発表したChatGPTのカスタムバージョンは「GPTs」と呼ばれ、特定の目的のためにカスタマイズ可能である。マーケターにとって注目すべき点は、これらのGPTsを利用して、ボードゲームのルールを学ぶ補助から、子どもたちへの数学教育、さらにはステッカーのデザインまで、多様な活用が可能であることだ。
特に重要なのは、これらのGPTsを作成するためにコーディングの知識が不要であるという点だ。個人用にも、会社内部用にも、一般公開用にも作成できるため、マーケターは特定の顧客層やビジネスニーズに合わせたカスタマイズが容易に行える。
GPTsの作成は、会話をスタートさせ、指示を与え、追加知識を入力し、ウェブ検索や画像生成、データ分析などの機能を選択することで実現される。現在、ChatGPT PlusとEnterpriseユーザーはCreative Writing Coach、CanvaやZapier AI ActionsなどのサンプルGPTを利用できるが、今後はより多くのユーザーに提供される予定だという。
このGPTsは、ChatGPTを特定の使用方法に合わせてカスタマイズするためのものであり、これまでにもカスタムインストラクションの導入などが行われてきたが、より多くの制御を求める声に応えて開発された。
GPTストアのローンチも、一度は延期されてしまったものの2024年初頭に予定されており、認証されたビルダーによる作品が公開される。ストアでの公開により、GPTsは検索可能となり、リーダーボードでのランク付けが行われる。また、ユーザーからの評価に基づき、収益化も可能である。
このGPTsはプライバシーと安全性にも配慮されており、チャットデータはビルダーと共有されない。また、サードパーティのAPIを使用する場合は、そのデータ送信をユーザーが選択できる。さらに、ビルダーが独自のGPTにアクションや知識をカスタマイズする場合、そのチャットデータをモデル改善に使用するかどうかもビルダーが選択することができる。