生成AIの台頭により、業務の効率化が実現するとともに、メディアの在り方や、企業と生活者の接点のつくりかたをも変えるような大きなインパクトが予測されます。ではマーケターは、これらの技術をどのように受け入れ、業務に生かしていけばよいのでしょうか。富士通の山根宏彰氏が解説します。
勝ち続ける仕組み「ハーベストループ」の考え方
この連載では、AIをマーケティングにどう生かすのかを具体例とともに示してきた。今回は、今号の特集にちなみ、ChatGPTを用いたKPI設定に関して触れてみようと思う。
「ダブルハーベスト(二重収穫)」という、一石二鳥のように、ひとつの取り組みから2つあるいはそれ以上の異なる成果を得る考え方がある。これは書籍『ダブルハーベスト勝ち続ける仕組みをつくるAI時代の戦略デザイン』(堀田創・尾原和啓著、ダイヤモンド社)で示された、DXやAI活用のための戦略デザイン手法である。例えば、あるプロジェクトを進めることで、直接的なビジネスの成果とともに、新しい学びや知識、スキルの獲得などの二次的な成果の獲得も構想に含めるのだ。
この前段階にあるのが、「ハーベストループ」という考えである。データを取り続けることで、そこからさらにユーザーへの価値を生み、企業が利益を得られるようになるという、「勝ち続ける仕組み」だ。そして著者の堀田氏が代表取締役Co-CEOを務めるシナモン社のブログ※1では、次のように述べている。
※1“顧客体験を起点としたパーパス策定とハーベストループ”.2021-9-14.
https://cinnamon.ai/ideas/2021/09/14/ux_harvestloop/,(参照2023-10-19)
こうしたフレームワークに基づいてハーベストループを完成させるにあたり、企業はまずどのボックスから埋めるべきかというと、それは「UX(顧客体験)」であるべきだと私は考えます。企業が目指す顧客体験は、Purpose(パーパス)に通じます。そして、なぜその企業が存在するのかという存在意義を突き詰めていけば、自ずとユニークバリュープロポジション(UVP)を考えなければならないでしょう。
企業の存在理由をユーザーのジョブと密接に関連付ける作業だと考えてみると、KPIを考えるには、そのさらなる上位概念となるユニークバリュープロポジション(UVP)から考えるとよいのかもしれない。以降で、具体例を含めて考えてみる。
ジョブ理論を基盤としたユニークバリュープロポジション
現代の競争の激しいビジネス環境において、企業の成功は...