女性ファッション誌『CanCam』の専属モデルとして、またテレビの情報発信番組にも出演して注目を集めるトラウデン直美氏。華やかな世界で活躍する一方で、社会問題にも関心を寄せ、知性派モデルとしてマスメディアを中心に様々な場で情報を発信している。トラウデン氏が思うメディアを通じたコミュニケーションのあり方について、考えを聞いた。
環境や社会課題をもっと身近に生活者の目線で始めた発信活動
キャスターでモデルのトラウデン直美氏は、雑誌『CanCam』のモデルを務める一方で、現在は環境省サステナビリティ広報大使を担うほか、ニュース番組ではコメンテーター、MCなど、発信者としても活躍している。
モデルとしてデビューしたのは13歳。中学校生活に馴染めなかったというトラウデン氏を見かねた母親が、学校とは別のことでやりがいを見つけて欲しいと、たまたまテレビで見かけたミス・ティーン・ジャパンに応募したことがきっかけだった。そこで見事グランプリに輝くと当時、審査員だった『CanCam』の編集長から声をかけられて、専属モデルとなった。
ドイツ人の父と日本人の母を持つトラウデン氏は、家庭では政治が日常的に話題にのぼっていたと話す。「ドイツでは、家族や友人、さらに職場の人同士でも政治や経済に関する話題をフランクに話すそうです。驚いたのは、ドイツで12歳の女の子が『なぜ自分には選挙権がないのか』と大人に疑問をぶつけた話。父からそんな話を聞き、そんなに幼い頃から政治に関心を持っているなんて、日本ではちょっとありえないなと思いました。でも、だからこそ日本ももっと気軽に身近な人と政治の話ができるといいのにと常々思っていましたね」。
そんなトラウデン氏は、学生の頃から環境問題に高い関心を寄せ、ドイツやオーストリアに研修で足を運び、海洋プラスチック問題や気候変動、CO2排出問題などを学んだ。「特に自分が関わっているファッション産業ではCO2排出量など、世界的に見ても環境への影響が大きいことがわかりました。それで自分にも課題解決のために何かできることはないだろうかと思い、『CanCam』や出演するテレビ番組で環境問題やSDGsについて発言するようになりました」。
雑誌や広告、テレビ番組の企画で現場に足を運んで取材するなど、そこで得た体験を自分ごと化して発信することも増えた。「奄美大島でマングローブの群生地を裸足で歩いた時には、自然界の合理性を感じました。マングローブは葉や根の形がとても不思議ですが、海水と淡水が混ざり合う水域で生息する環境に合わせて進化してきたと言われています。自然の中に身を置くと、完璧に保たれた調和を人間が崩すことなく、共存できる存在でありたいと感じて、それをもっと多くの人と共有していきたいなと思いました」。
発信することで感じ始めたプレッシャー
『CanCam』ではSDGsに関する連載を持ち、テレビではコメンテーターだけでなく、MCも務めるなど、発信する場を広げているトラウデン氏。発言する機会が増えるたびに、環境問題をはじめ、広く社会課題にも精通する“知性派”として一目置かれるようになり、嬉しい反面、複雑な気持ちも抱くようになった...