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私の広告観

職業カメラマンとは一線を画す「旅人の目線」 あるがままの姿の中に潜む『狂気』を写し出す 佐藤健寿の広告観

佐藤健寿さん

「奇界フォトグラファー」の異名を持つ写真家の佐藤健寿氏。奇妙なものやミステリアスなものを撮影した写真集「奇界遺産」は、大きな注目を集めた。「自分がおもしろいと思うものしか撮れない」という佐藤氏が広告写真やメディアに対して感じていることを聞いた。

佐藤健寿(さとう・けんじ)さん
写真家。世界の民俗から宇宙開発まで、世界120カ国以上を巡って幅広いテーマで撮影。代表作『奇界遺産』シリーズ、『世界』ほか。写真展「佐藤健寿展 奇界/世界」(高知県立美術館等)、「世界 MICROCOSM」(ライカギャラリー東京等)ほか各地で開催。TBS「クレイジージャーニー」ほか出演多数。

好奇心で撮影したエリア51が写真家への道を歩むきっかけに

写真家の佐藤健寿氏は、世界各地の「奇妙なもの」を対象に、博物学的・美学的視点から撮影・執筆を手がけ、著書・写真集を多数出版している。

佐藤氏が写真に関心を持ったのは大学の授業で触れたのがきっかけだった。美大の映像学科でメディアアートや映画、CGなどアナログからデジタルまで幅広いメディアについて学んだ。大学3年からはサウンドアート、メディアアートを専攻。しかし最終的に選んだのは「写真」だった。

「当時はインターネットが普及し始めた時代で、“ネットワーク”という概念に魅力を感じてデジタルの領域に関心を持ちました。でも、いざマシンで編集作業をすると、処理能力が低すぎて効率が悪い。アイデアを実現するためのマシンの能力がまだまだ低く、表現できることが限られてしまう。それに影響されることに疲れてしまって。もっとシンプルにアイデアを形にしたいと考えて着目したのが写真でした」。

大学卒業後アメリカに渡り、サンフランシスコのスクールでグラフィックと写真の両方を学んだ。

夏休みの課題でアメリカの州どこかひとつを選んで撮影することになり、自宅から近いネバダ州を選んだ佐藤氏。そこで転機となる出来事に遭遇する。ネバダ州といえば、有名なミステリースポット、エリア51がある。UFOや宇宙人に遭遇したなどという逸話が数多くあるその場所を撮影することに決めたという。

「僕が小中学生の頃はUFOや宇宙人に関するミステリー番組や超能力者や予言者と自称する人が出演する番組、関連した書籍や雑誌が身近にあって、友達とよくその話題で盛り上がったりして、自分には馴染みのある世界でした。近くにそんなスポットがあるのなら、せっかくなのでこれを機会に行ってみようと思ったんです」。

いまや一般的な観光スポットとなっているエリア51だが、当時は情報がほとんどなく、行き方すらもよくわからなかったという。ネット上の怪しげなサイトに載っていた手書きのような地図を頼りに現地を目指した。目的地付近まで来ると、砂漠のような何もない荒野が広がる。道なき道を進んで行くと立ち入り禁止の看板が現れた。そこがエリア51の到達地点である。付近を撮影し、帰宅後それらをまとめて提出した。

「先生やクラスメートはおもしろがってくれました。ネットの投稿サービスメディアにも、エリア51の写真をアップしたところ雑誌やWebメディアから使わせて...

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