失敗作からインスピレーションを感じ、「無駄なものこそ、おもしろい」と実験的な創作活動に勤しむ発明家の藤原麻里菜氏。その発想のひとつに、真逆の言葉同士をつなげることで得た新しい発見が創造力の源だと語る。藤原氏にとっての「言葉のパワー」とは何か?またインフルエンサーとしての活動から見えてきた広告クリエイティブ業界の課題とは何か、話を聞いた。
無駄なものにも存在価値がある 作品づくりを通して体現
発明家、コンテンツクリエイターで文筆家の藤原麻里菜氏。一般的に「無駄」とされるものをコンテンツとしてつくり出すことに魅力を見出し、2022年には「株式会社無駄」を立ち上げて創作活動を本格化させている。
幼い頃から絵を描いたり粘土遊びを楽しんだりと、創作することが好きだったという藤原氏。やがて単につくるだけではなく、作品として表現することに関心を抱くように。さらに、自分自身も表現者としての個性を磨きたいと考えるようになり、2012年に芸人を志してNSC(吉本総合芸能学院)に入学した。
「ものづくりでも、ちょっと変わった実験的なものが好きで。美術もシュールレアリスムなど前衛的な作品をよく観ていました」。
NSCを卒業後、吉本興業へ。そこで転機となる出来事があった。「当時、吉本ではYouTubeでコンテンツを配信するクリエイターを募集していたんです。そこで工作番組『ピタゴラスイッチ』(NHK Eテレ)のようなコンテンツをつくりたいなと思って応募しました」。いざ作品をつくってみたものの、思い通りに動かないなど、トラブルが発生。その作品は失敗に終わってしまったという。その時、藤原氏の心の片隅にあった「無駄」という言葉がふと頭をよぎった。
中学生の時にファンだったというロックバンド「SAKEROCK」。ある日バンドの公式Webサイト内に「無駄」というカテゴリーのページができた。その言葉の持つ不思議さに魅了され、「無駄ってなんか、カッコいい」というイメージを抱いていた。失敗作が、その記憶を身をもって思い起こさせてくれたのだ。
「その作品は失敗して無駄になってしまったけれど、それはそれでいいんじゃないかと、むしろ気に入ってしまって。そこから無駄な工作をしていけたらおもしろそうだと、イメージがどんどん膨らんでいきました」。
そんな気づきを得て、藤原氏は創作活動を加速化させていく。
「無駄」の裏にある未知の可能性を引き出す
藤原氏の初期の代表的な作品に「歩くとおっぱいが大きくなるマシーン」がある。サンダルの底に簡易な空気入れを付け、ゴムの風船につなげたもので、歩くたびに風船が膨らむ。それを胸に装着した作品だ。同作品を中心にクラウドファンディングで、役に立たない発明品を世界に...