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社会学の視点

シンクロ現象の面白さと不思議

遠藤 薫氏(学習院大学 名誉教授)

カエルのうたが新しい管理のヒントになる

新緑の季節、久しぶりに京都へ出かけた。小倉山は、平安~鎌倉時代の歌人・藤原定家が百人一首を選んだ地として知られる。百人一首が「小倉百人一首」とも呼ばれるのはそのためである。

ずいぶんと山道を登ると、愛宕念仏寺、化野念仏寺という2つの寺がある。ひっそりとした境内には、亡き人を供養する無数の小さな石仏が互いに寄り添って並び、苔の絨毯に少し埋もれながら、木漏れ日のなかでまどろんでいるようだ。そこから嵐山の方に下っていくと、小倉池という細長い池がある。水面は、蓮にびっしりと覆われ、周囲の木々や竹林と相俟って、一幅の屏風絵のように美しい。

そのBGMのように「ぐぉっ、ぐおっ」という(たぶん)ウシガエルの鳴き声が響く。蓮に隠れてよく見えないけれど、かなりたくさんいるようだ。ときどき、黒い影がポチャンと水に飛び込む。繊細な風景に似合わない野太い鳴き声だが、それがなんともユーモラスだ。カエルたちの求愛の歌なのだろうか。

「カエルの合唱」という童謡を思い出す。「カエルのうたが⋯⋯」と始まる輪唱曲である。実際、小倉池のカエルたちも、「合唱」というより「輪唱」のように、一匹一匹が、まるで約束があるかのように、交替で「ぐおっぐおっ」と鳴いているようだ。

私たちがたくさんの人や生き物や...

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