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社会学の視点

過ぎゆく時間を魅力化する

遠藤 薫氏(学習院大学)

廃墟とレトロと歴史遺産 ハマるのは、世界共通の感性?

オーストラリアのシドニーに行ってきた。残念ながら休暇ではなく、仕事だが、それでも知らない土地を訪ねるのは刺激的だ。仕事先のシドニー大学は、格式ある古い建造物と最新の現代的校舎とが広大なキャンパスに共存している。

ニューサウスウェールズ州のシドニーは、イングランドから渡った人々によって開拓された都市だ。多くのイングランド出身の建築家が、州政府の任命を受けてまちづくりに携わった。したがって、シドニー大学をはじめ、古い建築は19世紀ヨーロッパ風の石造りの後期ゴシック様式が多い。そびえ立つ時計台、鋭く屹立する塔からは不気味な石像たちが地上を見下ろす。夜ともなれば、亡霊が歩いていそうな佇まいである。石の壁面からはススキのような草が吹き出すように伸びている。

こう書くと、「なんだか廃墟みたい。シドニー大学ってさびれているの?」と思われる読者もいるかもしれないが、全くそんなことはない。同大学は1850年創立の屈指の名門大学で、世界大学ランキングでは常に上位にランクインしており、最先端の教育、研究施設が充実している。しかも「世界の最も美しい大学キャンパス10」にもランクインしている。

(日本人の旅人が一瞬そう思ってしまうような)「廃墟感」は、むしろ、そのように設えているという...

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