消費者は商品の評価や選択時に、触感をはじめとする五感を刺激する情報の影響を受けている。例えば触覚に関するケースでは、人は商品の写真が貼られたクリップボードを手に持って読むとき、ボードが重ければ商品の信頼性を高く評価する、ことなどが挙げられる。消費者は無自覚に、「重い→安定している→信頼できる」といった意味的連想を行い、それが一見無関係にみえる商品の評価に影響しているのだ。
本書『感覚訴求が消費者の感情と認知に及ぼす影響 無自覚な連鎖反応のメカニズム』は、前述のような感覚訴求によって生じる感情や認知の動きから商品評価まで、消費者に起こる「無自覚な連鎖反応」の現象確認とそのメカニズムについて説いていく。
著者の西井真祐子氏は本書で紹介する先行研究の結果から、次の3つの視点を挙げ、「感覚訴求が消費者にどのような連鎖反応を起こすか」について研究すべきだと考えたという。①感覚知覚に根差した感情、②情報処理の運動流暢性、③感覚知覚から想起される意味的連想やそれによって生じる感覚転移だ。
これらの視点から、本書では消費者の五感に訴求する「感覚(センサリー)マーケティング」の論点を体系的にまとめ、消費者に...
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