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社会学の視点

遊び=仕事という快楽

遠藤 薫氏(元・学習院大学)

フロー体験はまさに遊びのなかに現れる

『宣伝会議』5月号で、チクセントミハイのフロー体験というコンセプトを紹介した。フロー体験とは、棋士やアスリートや芸術家などが、凄いことを成し遂げるとき、彼らの内部で経験されている忘我の境地、いわばまさに全集中!の状態をいう。

そんなの一部の天才の話だよね、という人もいるかもしれない。でも、日常のちょっとした楽しみごとでも、私たちはフロー体験をしている。例えば仕事帰りにジムで汗を流すとき、ライブで推しのアイドルに声援を送るとき。人は我を忘れて状況と一体化、つまり、はまっているのである。

それはただの遊びであって、一時的快楽を追求しているだけ、との反論もあるかもしれない。だが、利益と結びつかない遊びでも、その結果クタクタになったり、時間やお金をつぎこんだり、さまざまな犠牲を払って、人々は遊びを楽しもうとする。

チクセントミハイは、フロー体験は、まさに遊びのなかにはっきりと現れると述べている。だから、フロー体験を考えるにあたって、フランスの思想家ロジェカイヨワの議論を参照している。カイヨワは、遊びを、眩暈、擬態、競争、偶然の4つに分類した。子供や動物はただ意味もなくクルクル回って、平衡感覚を失うことで喜んだりする。これが「眩暈」だ。

何かの真似っこをするのが...

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