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マーケティング部門の組織体制と人材育成

ユーザー視点に立った企業の事業変革 損保ジャパンの戦略

中村愼一氏(損害保険ジャパン)

デジタル化が進み、また生活者の価値観が変化するなかで、「保険」の持つ役割や提供できるサービスは大きく変わってきた。社会環境や社会課題にどのように向き合い、仕組みをつくっていけばいいのか。これまでメーカーであるパナソニックと保険会社の損害保険ジャパンで20年以上にわたって顧客視点に立った新規事業を立ち上げてきた中村愼一氏が解説する。

現状維持は「高リスク」利益を生み出す新規事業の重要性

当社のような損害保険会社は自動車保険を主力商品としています。自動車保険のビジネスは現時点では好調ですが、しかし将来を見据えると、需要低下は免れません。

その要因は2つあります。ひとつが自動車の台数そのものの減少。もうひとつが、自動運転車両の普及です。自動運転が普及すれば事故は減少します。それはもちろん喜ばしいことですが、自動車保険を提供する事業としては、減収は避けて通れないでしょう。

そのような理由から、現状維持のほうがリスクは高くなる。企業として、新たな事業を創造する必要性がありました。

保険事業や介護事業に次ぐ新規事業を創造するため、私は2017年11月に入社してビジネスデザイン戦略部を担当し、これまでに6つの新規事業を創造してきました。

①個人間カーシェアの「Anyca(エニカ)」、②マイカーリース「SOMPOで乗ーる」、③駐車場シェアの「akippa(アキッパ)」、④会員制Webサイト「SOMPO Park(ソンポパーク)」、⑤米国One Concern社とのAIを活用した防災減災事業、そして⑥少額短期保険会社「マイシュアランス」の設立。ひとつめの「Anyca」事業化から3年目となる21年度で、新規事業全体で売上50億円超、22年度には売上100億円を狙える位置にあります。ミッションは26年に複数の新規事業で100億円の利益を生み出すことです。

CFMの考え方を徹底 販売に貢献するコミュニケーション

これまで2社で進めてきた事業開発で共通しているのが、情報発信の起点となり、生活者と直接コミュニケーションを取ることができる、CRMサイトの構築でした。

生活者に相対する仕組みづくりは、いま、どのような業界でも求められています。顧客のロイヤリティを向上させてリコメンドにより増販させるのがCRMサイトの役割。特に前職のパナソニックでサイトの発展・拡大に携わった「CLUB Panasonic(クラブパナソニック)」は、現在の私の事業開発の礎となっているプロジェクトでもあります。

2007年11月にオープンした「クラブパナソニック」は、10年間で会員数1000万人、月間アクセス数2億2千万。目的は「販売に貢献する」こと。多くの人に毎日アクセスしてもらうことで、「ザイアンスの法則(単純接触効果)」により、ブランドに対してのNPSやロイヤルティが向上し、サービスや商品のリコメンドにより「販売に貢献」できるのです。

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